10000hit企画
惑星ステーション
銀時が向かったのは寝室で、後ろ手に鍵を締めるなり乱暴にベッドへ土方を投げた。
「い…っ」
衝撃に身を丸める土方を尻目に、直ぐに銀時もまたベッドに乗り上げてくる。
「どこ触られた」
両手首を布団に縫い付けられ、発せられた低く地を這うような声に、びくりと肩が揺れた。
「どこ、て…」
「さっきあのガキに触られてただろうが。どこだ」
ギリ、と掴まれたそこが悲鳴を上げ、自然と眉間に皺が寄る。
それを見た銀時が、何を勘違いしたのかより険しい顔をしてふぅん、と呟いた。
「そんなに言いたくない?あ、それとも、嬉しかったとか?土方敏感だから、満更でもなかったとかしたりして」
「――…」
言葉の内容が上手く理解できない。
まさか、銀時は今までずっとそんな風に俺のことをみていたのだろうか。
こんなに好きで好きでたまらないのに。
嘲るように笑って、否定しねぇんだ、と温度を無くす銀時の声を聞きながら、真っ白になった頭で考える。
パタリと抵抗を無くした土方に銀時は小さく舌を打つと、拘束していた土方の両手首を離して自由になった手のひらを乱雑に服の中へ潜り込ませた。
肌を滑る感覚にハタと意識を現実に戻す。
じくじくと湧き上がった怒りと悲しみに任せて土方は手を上げた。
パン、と頬を打つ音が部屋に響く。
事態を理解できないのか、ぽかんとした銀時が、ゆるゆると腕を上げて今しがた打たれたばかりの頬を覆った。
けれど今の土方に、銀時の様子を気にしていられるほど余裕なんてなくて。
「満更でもねぇのはどっちだ!テレビ出てちやほやされて、綺麗な女とキスまでして…!俺が、俺がどんな思いでお前を家で待ってたかなんて知りもしないくせに…!」
気づけばずっと溜め込んでいた思いを吐き出していて、いつの間にかボロボロと涙まで溢れ出していた。
情けない。こんなことで泣くなんて。
そう思ったけれど、ひび割れてとうに限界を訴えていた心は一度割れてしまえば戻すことなんてできなかった。
「もっとお前と一緒にいたいのに、触れ合っていたいのにお前は思わせぶりな態度だけしてさっさと寝ちまうし!寂しくてもそんな柄じゃねぇしとか男なのにとか考えたら素直に言える訳なんかねぇし…!」
気づけよバカ。
最後は消えるような声で呟いて腕で顔を覆う。
ひっく、と自分の嗚咽が静かになった部屋に響いた。
尚も喋らない銀時にもう呆れられてしまったのではないかと考えて尚更涙が溢れる。
なんで何も言ってくれねぇんだよ。
やっぱりお前にとって俺はどうでもいい存在なのかよ。
それでも、俺はお前のことが好きなんだよ。
この気持ちは一方通行のままなのだろうか。
だとしたら、なんて、虚しい。
「も、いい…」
こんなに苦しむなら、もういらない。
退いてくれ、と片方の手で銀時の胸板を押す。
けれどその手は直ぐに銀時のそれに絡め取られた。
そして微かな声が、耳に届く。
「もういいなんて、言うなよ…!」
乱暴に、けれどしっかりと体を抱きしめられる。
離せ、と身を捩ったけれども上回る力で抱き込められて解くことができなかった。
「ごめん、お前がそんなこと思ってるなんて、知らなくて自分勝手に決めつけて…ごめん」
「だからもういいって言ってるだろ」
「よくねぇ!ここで流したら、お前、俺の前から消えるつもりだろ!」
それだけは許さねぇ。
抱きしめられている腕に更に力が篭る。
痛みすら感じる抱擁に、止まりかけていた涙がまた溢れ出した。
痛みに対する涙ではなく、銀時の心はまだ自分を見ているという嬉しさからくるものが。
それを隠すようにそろそろと背中に腕を回して、ギュッと服を握り締める。
「なぁ土方。俺、お前がいなくなっちまったら生きていけやしねぇんだよ」
「……うん」
「お前を抱かなかったのも、ずっと我慢してたからガッツいちまいそうで、怖かったからだ」
「……ばか」
「ドラマのやつは、言おうとはしたんだけど、ごめん」
「……すっげぇ傷ついた」
あの見てみぬ振りをしたチクリとした痛みは、傷ついたものだった。
そう思い返せば、満たされ始めていた心がまた軋む。
けれどそれを打ち消すように銀時の温もりが広がった。
「もうそんな思いさせやしねぇ。なんなら今の仕事をやめたっていい」
「ぎん、それは、」
「お前が側にいねぇのにんな仕事続けたって意味ねぇもん」
どれだけのファンよりも、土方が大事だ。
耳元で注ぎ込まれるテノールに嬉しさで背中が震えた。
「好きだ。お前だけが、土方だけが」
今までの悲しみを払拭するように惜しみもなく降り注がれる言の葉。
その度に何度も頷いては俺も、と小さく笑って抱きしめる腕に力を込めた。
-END-
なこ様大変お待たせ致しました…!
銀さんが好きで好きでしょうがない土方さんで切甘ハピエン!
表現できてる…か、な…?←
書き終わって思うことは土方さんすっごい乙女だなと。
素敵なリクエストありがとうございました…!
※なこ様のみお持ち帰り可