フォークとナイフで無理心中 | ナノ

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フォークとナイフで無理心中


最終下校時間のチャイムが鳴って数分。
パタパタと慌ただしく駆けてくる音に、高杉は口許を小さく緩めた。
足音は高杉の根城である保健室の前でピタリと止まる。
磨りガラスにシルエットが映ったと思うと、カラカラと遠慮がちに扉がスライドされた。

「せんせ、」

ひょっこりと覗いた顔にはうっすらと汗が浮かんでいて、学生の独特な色気が振り撒かれている。

「んなとこいねぇでさっさと来いや」

顔を出した生徒――土方のためにコーヒーを淹れるべく立ち上がれば、失礼します、と弱々しい声が言った。

「コーヒーでいいか?」

「あ、おう」

「今淹れる」

適当に座って待ってろ、とぶっきらぼうに言いその場を離れる。
失礼します、と遠慮がちに呟いている姿がおかしくて小さく笑った。

作り置きしていたそれを注いだカップを2つ持ちひとつを土方の前へとおく。もうひとつは自分の口元へと運んだ。
「…ありがと、」
「なんだ、今日は随分素直だなァ?」
くしゃりと髪を混ぜればやめろ、と眉間にシワが寄せられた。
口ではやめろと言ってきていても実際そこまで嫌がっていないことを知っているから、そんな表情ですら可愛く思えてことさら髪を乱す。
最後に顕になった額に音をたてて口づければ、まるで茹でタコのように赤く染まる頬に笑みを浮かべた。





そんな幸せ過ぎる時間を昨日過ごした。が、1日経って迎えた今日の気分は最悪だった。
いや、最悪どころじゃすまない。周りのものに当たり散らし、ただでさえ人のよりつかない保健室は殊更敬遠されている。
そんないつもなら気にならないことにまで苛立ちは募っていく。
カチカチとなる秒針にすら舌を打ちそうになったとき、パタパタと廊下を走る音がした。
土方だ。
間違えるはずもないそれにスッと目を細める。
いつもなら上昇する気分も、今日ばかりはそうもいかなかった。

「……せんせ?」

ガラリと扉が開かれ、昨日と同じようにひょっこりと小さな頭がのぞく。
違うのは少し表情が不安気であるところくらいか。

何も言わずにジッと睨みつければ、少し怯んだ様子で肩を震わせた。
「し、ん……?」

舌ったらずに名前を呼ぶ姿は耳を下げた猫のようで、いつもなら可愛いと喉を鳴らすところだ。
けれど怒りが支配している頭の中ではそんな姿をアイツにも見せたのか更に苛立ちが増すだけだった。
「あ、と…俺、今日は帰り、ます…」

何も返さない俺に気まずさを感じたのかしどろもどろになりながら頭を下げて扉を閉めようとする。

「誰が帰っていいって言った。来い」

ドスをきかせた声で唸るとびくりと肩を震わせた土方は珍しくびくびくとしながら閉めかけた扉を開いて中へと足を踏み入れた。

目の前にくるまでの間視線を外すことなくにらみ続ける。
腕を伸ばせば届くか否か。
そろほどの距離で土方はピタリと足を止めると、不安そうな顔でこちらをみやった。

「しん…」
「銀八は上手かったか?」

土方の言葉を遮って低く唸る。

「は…?」

その言葉にきょとんと首を傾げると、訳がわからないというように眉をひそめた。

「なんも言われてねぇよ」
「ほう…シラを切るってかァ?」

ふん、と鼻を鳴らしたかと思うと力任せに腕を引っ張る。
痛い、と抗議する前にベッドの上へと投げると衝撃に体を丸めた。
「いつ…」
「言わねぇなら、体に聞くしかねぇよなァ?」

言いながら土方に覆い被さるようにベッドに乗り上げれば、ギシッとスプリングが悲鳴をあげる。

「ちょ、なに怒ってんだ…んんっ」

しんすけ、その声を聞く前に薄いそれをふさいだ。

「黙れ。淫乱が」

なめられたものだと忌々しげに吐き捨てると、可哀想なほど顔から血の気が引いていく。

「しんす、け‥・」
「今日の昼休み、中庭。これだけ言やぁわかるよなァ?」

二つのキーワードをチラつかせれば、目を見開きようやく俺が何を示しているのかを悟ったようだった。
その反応が全てを肯定したように思えて、更に機嫌は降下していく。
止めていた腕を動かして乱暴にズボンの前をくつろげてから下着と共に両足から抜き去ると、慣らしもしていないソコに無遠慮に指を差し入れた。
ひぐ、と白い喉が引きつって痙攣する。

「土方…」

眉間にシワを寄せて名前を呼べば、何故か土方の方が辛そうに顔を歪める。

「ち、がぅ…しん、すけ…ッ」

ギュッと腕を掴まれ、違うのだ、と震える声で否定する姿にぴくりと肩が揺れた。

「ハッ、何が違うんだか」

それでも騙されるものかと忌々しげに吐き出し、ぐにぐにと乾ききっているソコを無理やりこじ開けるように指先を曲げる。

「ぁ、ぐ、ぅ…」

痛みに耐えるように呻き、何度も喉を引きつらせる姿にゾクリと背筋が震えた。
こんな姿であいつに迫ったのか。
そう思うと、フツフツと怒りが湧いてくる。
けれど土方はふるふると首を振ってなおも違う、と告げた。

「お、れ…、しんすけのこと、なんも、しらなくて…ッ」
「…あ?」

恐怖と痛みからだろうか、ガクガクと震えている指先に力が篭められる。

「幼なじみの、銀八なら、晋助のこと、おしえてくれるかと、おもって…」

だって、俺はまだガキだから。

そう呟いた時の土方の表情は悔しさと不安と、そして思春期特有の色気に彩られていて
ゴクリと唾を飲み込んだ。

「…バカだろ、お前。ガキだと思ってたら手なんか出しゃあしねぇよ」
「でも、晋助は俺のセンセーだろ…?」

その言葉に、土方が言わんとする不安を汲み取って、ようやく今まで自分が勘違いをしていたことに気づいた。
そういえば、この意地っ張りな恋人は不安を表に出さないのだと今さらながら思い出す。

「…本当に、銀八とはなんもなかったのか」

ジロリと睨みつつ、無理やりこじ開けていた指を引き抜く。
ぁ、と小さく喘いだ土方はふにゃりと笑って、両の腕を首に回してきた。

「なんもねぇよ。」

俺はテメェだけでいっぱいいっぱいだ。

今にも泣きそうな、切実な声が、ひび割れかけていた胸の内を満たしていく。

「…分からねぇことがあんなら、何だって教えてやらァ。だからもう二度とあいつに近づくんじゃねぇぞ」
「はは、善処する」

擽ったそうに笑う土方の額に、自分のそれをくっつけて、薄い唇に口付けた。



-END-



〇おまけ


「勘違いしてたことは分かった。だが、銀八と一緒にいたことにゃあ変わりあるめぇよなぁ?」

ニヤリ、と意地の悪い笑みを浮かべると土方の頬が痙攣する。

「ひっ…!?」

「たっぷり仕置きしてやらァ」

露になったままのソコを掴んで、首筋に舌を這わせる。

「や、ちょ、それはいらな…んんっ」

うるさい口を塞いで好き勝手に体をまさぐった。

-END-





ころ様、大変お待たせいたしました…!
銀八と仲がいい土方くんにイラついてひどいことをする高杉先生。けどそれは…と、なんとも素敵なリクエストをいただきまして…!
なのに高杉先生あんまりひどくないですね。←

多分銀八はこのあとボコボコにされます。高杉理不尽。

リクエストありがとうございました!





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