10000hit企画
scippare
たまには運動しろよメタボになるぞ。ってことで稽古に付き合え、と手合わせを申し込んだ。のだが。
(し、心臓がもたねぇぇえええっ)
激しく後悔中、である。
「なぁ土方くん、なんでさっきからこっち見ねぇの?」
「あ?ちゃんと見てんじゃねぇか」
長らくの打ち合いを終え少し休憩するかとその場に身を倒して天井を見上げていれば、突然板目の間に銀髪が映り込む。
ジッとこちらを見つめてくる瞳に耐えられずそれとなく視線を外しながら答えれば、うそ、と頬をやんわりと捕まれて視線を固定された。
「俺の顔は見てるけど目は見てねぇだろ」
「そんな、」
「ことないなんて言わせねぇぞ。俺はお前よりお前のこと分かってるっつの」
ペン、と額を弾かれ予想以上の痛みにうっすらと涙を浮かべる。何すんだ、という気持ちを込めて睨み付けるも、こんな可愛くない態度ですら愛しむような笑みを見てしまって顔を上げることができなくなってしまった。
「〜っ」
「あらら、真っ赤になっちゃってかーわいー」
くしゃりと髪を撫でられことさら恥ずかしさが増す。
触るな、と払いのけようとしたとき扉の方から「あー!」とわざとらしく声があげられそれを合図としたようにぞろぞろと兵士たちが押し入った。
「こんなところに二人っきりで何してるんですかィ?」
「んー?何って、見ての通り稽古だけど?」
「そんなに近づいてですかィ?」
指摘され慌てて万事屋から距離をとる。
万事屋は万事屋で「ちぇ、せっかくのデートだったのに」と唇を尖らせていた。
「旦那ァ困りますぜ?きちんと約束は守ってもらいやせんと」
なぜだかいつもより低い声を出す総悟に首を傾げる。どことなくピリピリとした空気すら纏っているのもにも気にも止めず、万事屋は不可抗力だ、と肩を竦めていた。
「俺たちも稽古してくだせぇよ。いいですよねィ、土方さん」
「え、あ、お、おう。」
突然話を振られ吃りながらも頷く。
なんだか分からないけれど日頃やる気のない総悟がやる気を出していることに少しだけ感動して柄にもなく万事屋に頼む、と小さく呟いた。
「土方くんの頼みとあらば仕方ない、か…」
その代わり後でコーチ代ちょうだいねなんてほざきながら道場の真ん中へと歩いていく後ろ姿を眺めて、何か間違いを起こしてしまったのではないかと得体の知れない後悔に苛まれた。
最初に総悟と万事屋が向き合う。始め、の合図がくだるのと同時に激しい打ち合いが始まった。
本来なら身内である総悟を応援しなければならないのだろう。
けれど目の前で日頃見られない万事屋の打ち合い姿を披露されてはついそちらに心が傾いてしまう。
無駄のない動きに研ぎ澄まされた瞬発力。
鈍い光を魅せる瞳。
激しい動きによって乱れた合わせ目の隙間から覗く逞しい胸板。
そのどれもが心を揺さぶられるものばかりで。
(かっけぇ…)
首筋を伝う汗すらも見いるきっかけになってしまい、そこから情事中に見る首筋や汗を連想してしまってゴクリと喉が鳴った。
***
「はい、今日はここまでー」
万事屋の声と共に周りをザッと見回す。先ほどまであんなに威勢のよかった隊士たちが道場の隅でぐったりしているのを見て、訓練やりなおさなきゃなんねぇな、とぼんやりした頭で考えた。
「銀さんもまだまだ現役だろ?これでちったぁ俺のこと見直し…た…」
手で汗を拭いながら万事屋がこちらへと歩み寄ってくる。何故か途中で途切れた言葉に、ことりと首を傾げた。
一体どうしたのかという意を込めて見上げる。
いつの間にか動きすらも止めてしまっていた万事屋は視線を辺りに配ってから小さく息を吐き出した。
「おま、なんちゅう顔してんの」
「?」
「物欲しそうな顔しちゃって」
そう頬を撫でながら言われるが全く自覚が無いため首をより傾げるしかない。
「そんなに銀さんかっこよかった?」
にぃっと上げられた口角の色気に、ようやく自分の顔を連想してカァッと顔に熱が集まった。
「ば、おま、誰がっ」
「はいはい、照れない照れない」
「て、照れてねぇ!」
精一杯の抗議をするがそれも本気で取り合ってもらえず流される。
どうすることも出来なくてふぃ、と顔を反らせばクスリと小さく笑う音が聞こえた。
「意地っ張り」
「う、わ…!?」
耳元で声が聞こえたかと思うと体がふわりと浮き上がる。
慌てて近くにあったものに捕まればしっとりと汗ばんだ首筋が目の前にあってまたドキリと心臓が鳴った。
どうやら抱き上げられて、咄嗟に捕まったのは万事屋の首筋らしい。
「んじゃまぁコーチ代でも頂くとしますか」
顔は見えないのに厭らしく笑う気配だけはしっかりと伝わってきて、もう心臓が持たないと心の中で悲鳴をあげた。
-END-
しゃー様お待たせいたしました…!
もうどんだけ待たせるんだって話ですね…。
坂田さんにキュンとくる土方さんというリクでしたがいかがでしたでしょうか?
最初はスタンダードに土方さんを助ける坂田さんとかにしようかなと思ったんですが、違うシチュで書いてみようと思った結果がこれです←
なんだかリクにそえていない気がしないでもないのですが…
ものすっごく楽しかったです。←
反省はしているが後悔はしていないというやつです(`・ω・´)
…すみません調子に乗りました。
書き直せコノヤローと思いましたら素直におっしゃってください!
書き直しいたします…!
こんなやつですがこれからもよろしくお願いします…!
それではこの度は企画参加ありがとうございました!