自室に戻り、布団を敷く。
そういえば、だんだん体が重くなってきたかもしれない。頭もずきずきする。
だるいと思ったら負けなんだろうけど、これはちょっと負けても仕方ない。

寝転がって、布団に深く潜り込む。
寒気までしてきて、なんかもう泣きそうだ。これも熱のときに感じる、独特の心細さかもしれない。

「千陽、入るよ」
「んー」

「お、ちゃんと寝てるじゃない。偉い偉い。」

私の横に腰を降ろして、水桶で濡らした手拭いをおでこに置いてくれる。

「…ありがとう」
「ん。じゃあ僕は行くけど、晩ご飯は一くんにお粥作ってもらうから。ちゃんと寝てなよ」

そう言って部屋を出ていく総司。
お粥は一くんに作らせるらしい。
総司も料理は得意ではないというのを自覚しているらしいので、総司なりの気遣いか、単に面倒なだけか分からないけれど、総司の塩辛いお粥じゃなくて有難いと、心の奥で思った。


総司は、喧嘩もよくするしイタズラもしてくるし、大雑把だし面倒くさがりだ。だけど私が困ったとき、なんだかんだ助けてくれる。私からすると歳の近い兄みたいな存在である。

試衛館からの付き合いのみんなは、最年少である私を、妹みたいに思っている筈だ。私もみんなを兄のように慕ってきた。
平助は兄というか、双子みたいな感じもするけれど。

みんな強くて、優しくて、頼りになる自慢のお兄ちゃん達。

熱のせいで弱気になっているからか、みんなの顔が見たくなった。
早く寝て早く治そう。

そう思って目を閉じると、あっという間に私の意識は沈んでいった。



※※※


夜。
部屋の外がなんだか騒がしくて、目が覚めた。

何かあったのだろうか、と体を布団から起こす。体が思った以上に軽くなっていて、少し嬉しくなりながら廊下に顔を出す。

すると、ちょうど一くんがお粥を持って歩いてきた。

「あ、一くん」
「なんだ、起きていたのか」

「うん。ねぇ、騒がしいけど、なんかあったの?」
「ああ、羅刹が屯所を抜け出したらしい。」

「ええっ、早く捕まえなきゃいけないじゃん!」
「だから、今から俺たちが向かうのだ。」

「待って!私も行…」
「駄目だ。お前は寝ておけ」

「…もう治った!ほら!」

そう言って私は高めに跳ねてみせる。
しかし一くんは顔を険しくして、私にお粥を無理矢理持たせた。

「ぶり返したらどうする気だ。羅刹には幹部総員で対応するから問題ない。お前は粥を食って寝て治せ。分かったな?」
「………分かった」

普段あまり喋らない一くんにまくし立てるように言われてしまえば、取り付く島など何処にも見つからなかった。

「暇だからといって稽古など始めるなよ」
「分かった」

「粥を食ったら寝るのだぞ」
「はーい」

「本当に分かっているのか」
「…分かってるから大丈夫」

「分かったなら良い。行って来る」
「うん。お粥ありがとう」

一くんの過保護っぷりに苦笑いしながらも、襖を閉めて、布団に座ってお粥を食べる。
良い感じに塩のきいたお粥は、さすが一くんと言う他ない。

明日の朝になれば治っている筈だから、早く寝てしまおう。
そう思って、また目を閉じた。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -