あの夜以来の、久々の外出。
あの夜に比べると随分と暖かくなっていて、長い間外に出ていなかったのだと少し驚いた。

「ごめんね、そんなに遠くまでは行けないけど」
「ううん!外の空気を吸えただけでも嬉しい」

「そう?なら良かった。早くお父さんのこと探しに行けるといいね」
「…うん」

父様が行方不明になってから、もう随分と月日が経つ。
まさか、と最悪の結末が頭に浮かぶこともあるけれど、千陽ちゃんや近藤さんや、周りの方の励ましと、山南さんの「蘭方医は利用価値があるから、そう簡単には殺さない」という言葉のお陰で、なんとか気持ちを保たせることが出来ている。

…せっかく千陽ちゃんが元気付けようとしてくれてるんだから、今は考えないようにしておこう。

屯所の外へ出ると、前から原田さんと永倉さんが歩いてくるのが見えた。

「ん?千陽に千鶴ちゃんじゃねーか」
「あ、左之さんと新ぱっつぁん」

「千鶴ちゃん、外出許可出たのか?良かったなー」
「あっ、いえ、そういう訳では…」

永倉さんの言葉にとっさに否定の言葉を返すと、その横にいた原田さんが怪訝な顔をした。

「何だ、違うのか?じゃあ千陽、千鶴外に出して大丈夫なのかよ?またどやされんじゃねぇのか?」
「近藤さんには許可貰ったよ!でも、土方さんには内緒にしといてね、二人共」

「…何だそれ?土方さんには内緒って、どういう意味だよ?」
「千鶴が元気無かったから、息抜きに散歩だけでもさせてあげたいって近藤さんお願いしたの。土方さんに言って駄目って言われたら可哀想だしさー」

「ほー、なるほどな…」

千陽ちゃんが事情を説明すると、左之さんはしばらく思案顔になったあと、顔を上げて機嫌良さげに言った。

「じゃあ俺が美味いもん食わしてやるよ。近くに良い茶屋があんだ」

その言葉に、永倉さんと千陽ちゃんが目を輝かす。

「うおおおお!さっすが左之!ありがとよ!」
「わーい左之さんありがとー!」

「お前らに言ったんじゃねぇよ!千鶴を励ます為だろうが!」

原田さんに抱きつきに行く二人と、その二人をかわす原田さん。
二人をかわしながら、優しげに笑ってこちらを見る。

「千鶴、お前甘いもん食えるか?」
「…あ、はいっ!大好きです!」

「そんじゃ、決まりだな」

未だ抱きつこうとしてくる永倉さんを一蹴りして、すたすたと歩いて行く原田さん。
千陽ちゃんに手を牽かれ、原田さんの後をついていく。




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