「近藤さん、千鶴と外行ってきていいですか?」

近藤さんが持ってきて下さった金平糖を食べながら、千陽ちゃんがいきなりそんなことを言い出した。

「え、…私を?」
「雪村君を外にか…しかし、トシは雪村君に外出許可は出してないだろう?」

千陽ちゃんの言葉に少し期待をしたものの、近藤さんの口から出た、トシ、という名前に少し身を引いた。
…私だって外に出て父様の情報を集めたいけれど、土方さんから外出許可を得ていない。土方さんが危険を考慮してくれているというのも分かっているので、もどかしいけれど我慢するしかないのだ。

「でも、こんなところでいきなり軟禁みたいなことされるわ、お父さんも見つからないわじゃ、千鶴だって精神的に堪えますよ」
「それは……、そうだな…」

「屯所の周り歩いてくるだけですからー。私が着いてますし、大丈夫ですって!」
「む、う…それくらいならば、いいのかもしれんが」

「ね?ちょうど土方さんも大阪だし、今しかないですよ!」

駄目押しとばかりに千陽ちゃんは言う。
近藤さんも、困ったように顎に手を当てて考え始め、そして答えが決まったのか、顔を上げた。

「トシには申し訳ないが…、そうかもしれんな。よし、俺が許可しよう」

「やった!ありがとうございます、近藤さん」
「トシに知られると怒られてしまうから、内密にな」

「はい、行ってきます!」

そうして外に出られることになった私は、千陽ちゃんに手を引かれて部屋を出た。


※※※


「あ、あの、千陽ちゃん」

意気揚々と進んで行く千陽ちゃんに、声をかける。
くるりと私の方を振り返ったあとに、何故か、少し不安そうな顔をした。

「…あ、もしかして、別に外出たくなかった?」

思ってもいなかった言葉が千陽ちゃんの口から飛び出したので、あわてて弁解する。

「ちっ、違うよ!ずっと外に出たいと思ってたから、すごく有難いよ!」
「ほんと?ごめんね、私ひとりで突っ走ってたかと思った」

「うん、ありがとう。だけど、私を連れていって、何かあったら…と思って」

千陽ちゃんがいくら幹部だからと言っても、やはり女の子な訳で。
不逞浪士に襲われてしまったりしても、私は正直戦える自信が無い。
そしてもし不逞浪士の数が多かった場合、私は千陽ちゃんに迷惑を掛けてしまう、そう思った。

でも、千陽ちゃんは、そんな私の心配をよそに、強気な笑顔で言う。

「大丈夫。私、千鶴が思ってるよりも強いよ?何があっても守ってあげる!」

千陽ちゃんの笑顔には、そう言えるだけの研鑽を重ねたのだろうと思わせるような自信が滲み出ていて、とても心強く感じた。







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