それは総司の部屋でごろごろしていた時のこと。

「ねぇナマエ」
「んー?」

私は少年マンガを、総司は少女マンガを読んでいた。

「"おいで"って言われたら、キュンってするの?」
「へ?何、いきなり」

「これ」

そう言って見せられたのは、少女マンガの1コマ。

「ああ、うん、どうだろう…。シチュエーションによるんじゃない?」
「ふーん。例えば?」

「例えば…、座ってて、隣ぽんってしながら"おいで"とか…?」
「ふーん」

じゃあこれは?と、身を屈めて手を叩きながら"おいで"と言った。

それは犬や猫を呼ぶときの"おいで"そのもので。

「え……それはキュンとはしない」
「あ、そ」

じゃあこれは?と、次はもぞもぞとベッドに潜り始めた総司。
そして、自分の脇の部分の掛け布団を捲って、

「おいで」
「……遠慮します」

「えー、なんでさ?」
「行くわけないでしょ!ていうか何、"おいで"がどうしたの?」

「…特に意味は無いんだけど、ナマエにキュンってしてほしくって」
「は?」

何だ?
キュンってしてほしいって…。

「いや、だからさ。僕らって付き合い始めて、結構経つじゃない」
「そうだね」

「そうなるとさ、キュンってすることも少なくなるでしょ?」
「うん、まあ」

「だから久々にキュンってしてもらおうと思ったんだよね」
「………ああ」

分かったような、分からないような。
私のために"おいで"を研究してくれていることは分かった。

けど、そんなことをしなくても、別に新しいキュンが無くても、私が総司のことを好きなことは変わらないのに。

「ナマエは僕のこと好き?」
「え、うん」

「だよね」
「……だよねって」

「僕もナマエのこと好きだよ」
「…!」

いきなり真剣な顔で言われた言葉。
それは私の心臓を跳ねさせるには十分だった。

「ナマエ、」

さっきまで真剣だった顔は、ふわっと笑顔になって。
両手は私に向けて広げられていた。

「おいで」

私が総司の腕に収まるまで、あと3秒。





「おいで」について



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しゃべくりで"おいで"についてやってたんです(^q^)




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