10.



夕食後。リビングの机の上には、みんなの勉強道具とお菓子が広げられている。

「明日の教科って何だっけ」
「数学と日本史だよ」

「うっわ、どっちも苦手」
「千陽は苦手じゃないやつなんて無いでしょ」

「言い返す言葉が見当たらないっス」
「千陽、早く始めないと寝れなくなるんじゃないか?」

「ザキヤマぁぁ〜数学教えてぇぇぇ」
「……ザキヤマって言うな」

そうです。明日から中間テストです。

今日の部活は、テストに備えて1時間で終了。
部活終わりに、私と平助は土方さんに呼び出された。
私と平助がセットで呼び出されるときは、大抵勉強のことである。
今日もやっぱりテストのことで、土方さんに超ドスの効いた声で「赤点取ったら承知しねぇぞ分かったか馬鹿共」と言われた。怖かった。

私達は良い点を取るためでも、良い順位を取るためでもなく、赤点を取って土方さんにシバかれるのを逃れるために勉強をするのだ。

「…はじめくん、分かんない」
「どれがだ」

「こことここと、ここからここ」
「……要するに全部か」

「全部、だね…」

テスト勉強のとき、私の定位置ははじめくんの隣である。

はじめくんは頭が良い。学年でいっつも1番だ。
授業もしっかり受けているし、授業中に居眠りやよそ事をしているのは見たことが無い気がする。

「…で、これを代入したら答えは何になる?」
「えー、っとね…………84!」

「……違う」
「え」

「ここにマイナスの符号があるだろう」
「あ、あー本当だ!じゃあ-84だ!」

「正解。あんたはいつもマイナスを見落とすからな。テスト中は常にそれを心掛けろ」
「おっす!」

「じゃあ次、」
「え、休憩じゃないの?」

「一問ごとに休憩しようとするな」
「もー嫌だよー数字見てたら気持ち悪いよー」

「あんたの頭が悪いのだから仕方ないだろう」
「じゃあせめて一回日本史にしようよ!問題出してはじめくん!」

「……1582年、織田信長が明智光秀に殺害された事件を何という」
「………………………」

「さっきやっただろう。1582年だぞ。いちごぱんつの…」
「いちごぱんつの…本能寺?本能寺の変!」

「そうだ。あんたは語呂合わせで覚えるしか無いからな」
「イエッサー!」

私達の果てしないやりとりを見て、他の面々は笑っていた。

「"いちごぱんつ"って!はじめくんが"いちごぱんつ"って言った!」
「…かなり真顔で"いちごぱんつ"って言ったね」

「本人は真剣なのだろうな」
「しっかし千陽も物覚え悪いなぁ」

「はじめくんってさ、いつもいつも千陽に付きっきりで大変だね」
「それでも学年1位だもんな…」

「平助。早くこの問題を解け」
「分かってるって!山崎の鬼!」

「…分かっているのなら俺はもう自分の勉強をする」
「嘘!嘘ですごめん!解くから教えて!」

「平助も千陽のこと言えないくらい物覚え悪いよね。山崎も大変だなぁ」
「大変だと思うなら変わってくれ沖田」

「嫌だよ。そんな頭悪いののお守りなんてごめんだね」
「ちょ…なんか俺ボロクソ言われてね?」



10.勉強をしよう!(1日目)
(はじめくん分かんない…泣きたい…)
(恨むなら日頃居眠りしている自分を恨め)








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