09.

「総司!DVD見よう!」

全く意味を為していないような大音量のノックの後に、千陽が部屋に飛び込んで来た。

「何?」
「怖いの!」

「アバウトだね」
「リビング集合。お菓子持参ね!」

言いたいことだけ言って部屋を出ていく千陽。僕まだ行くって言ってないんだけどな。

仕方なく、お菓子を持って廊下に出ると、平助の声が聞こえた。

「嫌だよ!ホラーなんか見たら死ぬ!ぜってぇ見ねえ!」
「見ないの?」

「見ねえよ!」
「そっか…。じゃあこの前平助が千鶴の…、」

「わーわーわー!分かった!見る見る見ます!だから言うな!」
「じゃあリビング集合だからね!来ないと千鶴にバラすからね!」

どうやら平助は何かしらの弱みを握られているらしい。
ご愁傷さま。あとで千陽に教えてもらおう。

リビングに行くと、はじめくんがDVDをセットしていた。

「はじめくんも見るの?」
「ん、ああ」

「珍しいね」
「怖すぎると評判の洋画らしい。少し気になってな」

「そんなに怖いの?千陽と平助が見たらトイレも行けなくなるんじゃない?」
「…有り得るな」

そんなことを話していると、平助と千陽が降りてきた。どうやら山崎も一緒らしい。

「はじめくんセットOK?」
「ああ」

「よっしゃ、電気消しまーす!」

そしてその後、たまたまリビングに来た土方さんと近藤さんも巻き添えになり、結局全員で見ることになった。

「ぎゃああああ!」
「うわあああああ!」

「ちょっと君達うるさいんだけど」
「お前らの声にびっくりするんだよ!黙りやがれ!」

「そもそも怖い場面でも無いだろう」
「まだ始まったばかりだぞ…」

怖くもない場面で悲鳴を上げる千陽と平助に向かって、僕、土方さん、はじめくん、山崎、と文句を言う。

そう言えば近藤さんの声がさっきから聞こえないな。
そう思って近藤さんを探すと、テレビの僅かな光に照らされた近藤さんがいた。
体操座りで、耳を塞ぎ、顔を伏せている。肩が微妙に震えていた気がした。土方さんなら大声で笑ってやるところだが、近藤さんなので見なかったことにしておいた。

映画はというと、グロかったし気味悪いし、今まで見た中ではなかなかのホラー映画だった。
平助、千陽は常に叫んでいて、もう何が怖くて叫んでいるのか分からない状況になっていた。

「意外と怖かったねぇ」
「…ああ。何度か鳥肌が立った」

あんな平然とした顔で見てたはじめくんでも、鳥肌が立ったらしい。
はじめくんで鳥肌ってことは、やっぱりこの映画は怖いものだったのか。

映画も終わったので、リビングの電気をつける。

「ぎぃやぁぁぁぁ!」
「うぉあああああ!」

いきなり明るくなったことにすら驚いたらしい平助と千陽がまた絶叫する。

「……電気つけただけなんですけど」
「だぁから!うるせぇんだよお前ら!」

「驚くところじゃ無いだろう」
「…大丈夫かお前達」

またさっきの順に文句を言う。
この四人は比較的、ホラーだとか怪談だとかに強いらしい。
土方さんが怖がってたら大爆笑だったのに。

「よし、近藤さん、部屋戻って仕事の続きでも………おい、近藤さん?」

土方さんの声に、みんな近藤さんの方を振り向く。近藤さんはさっき見たときと同じ体制で停止していた。

「近藤さん、映画終わったぞ」

土方さんが近藤さんを揺さぶると、大袈裟なくらいに肩が跳ねた。そりゃもう、びくっ!!!と。


「!!……お、おお、歳か」

顔を上げた近藤さん。目は潤んでいたから、多分あまりの恐怖に涙が出てしまったんだと思う。

「ど、どうしたんだよ、近藤さん。そんなに怖かったか?」
「い、いや、怖かった訳では…」

「…近藤さん、涙出てるけど」
「あはは!本当だ!私達より怖がってたんじゃないですか!」

「違うぞ、そういう訳では…!平助と千陽の見間違いじゃないかね?わははは」

近藤さんは平気な顔で繕おうとしているものの、どう見ても無駄な気がする。はじめくんと土方さんの方を見ると、2人とも苦笑いを浮かべていた。さすがに僕らでもフォローは出来なさそうだ。

それからしばらく、近藤さんはからかわれ続けていた。




09.大人4名、子供3名 その2
(こ、近藤さん、後ろ………)
(!!!!!)
(なんちってー!)







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