07.

「聞いているのか千陽」
「聞いてます…ほんとすいませんでした…」

「もういいんじゃない?はじめくん。千陽も反省してるみたいだし」
「お前もだ総司。何を他人事のような顔をしている」

「そうだよ!何で自分は遅刻してないみたいな顔してんの!」
「あれ?僕も遅刻なの?」

「ふざけるな、遅刻常習犯め。日頃の遅刻っぷりを忘れたとは言わせんぞ」
「うーん、でもね、眠いものは眠いんだ。仕方ないと僕は思うけどな」

「うわ、偉そう」
「…本当にあんたはすぐ開き直るな」

「人間の三大欲求は食欲、性欲、睡眠欲って言うじゃない。僕は睡眠欲の部分が人より多いんだよ」
「はじめくん、私も睡眠欲が多いんだよ!」

「千陽は性欲の間違いじゃない?」
「は?ちょ、馬鹿じゃないの?総司に私の性欲の何が分かるの」

「ねぇ、はじめくんは千陽の性欲、どう思う?」
「…は?いや、」

「ちょっとはじめくん!私は別に性欲強くないからね!」
「だから何の話をしているんだあんたらは!」

悪夢が始まって数分。
私と総司は、朝っぱらから校門の前で正座で説教されていた。グッドモーニング。

はじめくんの説教もさることながら、総司も頭の回転が速いようで、ああ言えばこう言うの攻防戦が繰り広げられていた。

たまに、吹き出してしまうような総司の返答にまんまと吹き出してしまうと、何を笑っている、とはじめくんに睨まれるから困ったものである。

「ていうかね、はじめくん。私は総司と違って遅刻したくてしてるわけじゃないの」
「そんなの僕も一緒だよ」

「私よりも総司の方が確実に回数多いじゃん!一緒にしないで!」
「…言っておくがな、千陽。したくてしているわけじゃないから良い、ということではなく、遅刻していることが駄目なのだ。」

「う…」
「それにお前も回数で言えば総司とさして違わない。総司もお前も一緒だ」

「…うっそ。私そんなに遅刻してる?」
「そんなに遅刻してないと思ってたのがすごいよ」

「総司に言われると腹立つ!」

私の隣で正座してる男は、飄々としながら「僕は遅刻してないんです」的な態度を貫き通そうとしている。

「ねぇねぇはじめくん、足痺れてきた」
「はじめくん、僕も足痺れてきた」

「いつまでも正座をしていれば足も痺れてくるだろう。無理もない」
「無理もない、じゃなくてさ!正座させてんのはじめくんじゃん!」

「何が原因で俺に正座させられてるか考えてみろ」
「………睡眠欲が人より大きいからです」

「だから千陽は性欲だって」
「性欲じゃないって言ってんじゃん!

「じゃあ仕方ないから食欲にしといてあげるよ。あとでコーラね」
「意味わかんないしコーラより三ツ矢サイダーのがうまいし」

「いや、三ツ矢よりスコールだと思うよ」
「三ツ矢だね。私は断固三ツ矢サイダー派だよ」

「はじめくんはどれがいい?」
「……茶だろう」

突拍子もなく聞かれて、呆れながら間を置いて答える。

「炭酸の話だよー。お茶は炭酸じゃないから却下!」
「…炭酸。……ならば、カルピスソーダか」

「ああ、カルピスソーダもなかなかいいじゃない」
「スコールって言ってたじゃん総司!浮気!?男に二言は無いんだよ!」

「スコールもカルピスソーダも大して変わらないし」
「あ、…あーあーあー、スコールが悲しむわー」

「スコールが悲しもうと知ったことじゃないからねぇ」
「……」

「人でなし!総司はんは人でなしでござりまする!」
「………」

「うわ、気持ち悪いなあ」
「…………」

「ひ、人でなし…!」
「………もういいから教室へ行け」

目的を見失って堂々巡りしている話に、呆れ返ったはじめくんは、盛大なため息をついてそう言った。

その瞬間、私たちの口論もはたっと終わる。

「お、今日の説教は終わり?」
「………これじゃあ説教にもなっていないだろう。千陽、俺たちは1限目は土方先生だ。急ぐぞ」

「はーい」

正座から解放された私は、痺れのせいで若干変な動きをしながらも歩き出す。

どうやら今日の説教タイムは、私たちが勝利したらしかった。



07.遅刻魔vs風紀委員
(次遅刻したら1週間トイレ掃除をさせてやろう)
(…せめて廊下でお願いします)




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