06.

気持ち良く目が覚めた。
窓から差し込む光も、鳥のさえずりもなんとなく心地良い。

ぼんやりと焦点の定まらない目で、携帯のウィンドウを見る。

そして、

「!!!!!!」

布団から跳ね起きた。

ベットから飛び降りて、制服を着て、顔を洗ってリビングへ行くと、優雅に食パンをオーブンにかけている総司がいた。

「やってまったー!」
「何さ、朝一番に人の顔見て"やってまったー!"って」

「だって総司が起きてるってことは、そんな時間ってことじゃん!遅刻だ!」
「失礼しちゃうな。僕は今日いつもより五分も早く起きました」

「総司いつも何分遅刻してるか知ってるの?総司の五分の早起きなんてミジンコレベルだよ」
「ミジンコ………。ねぇ、冷蔵庫に入ってるジャム取って」

「…どれ?」
「いちご。千陽の分も焼く?」

「いや、食べてる時間ないし」

冷蔵庫からいちごジャムを出してテーブルの上に置く。
急がなきゃいけないのに、あまりの総司の優雅さに、まだ時間があるように錯覚してしまう。

「どうせ今から走っても遅刻だよ。朝ご飯食べないとはじめくんのお説教乗り切れないよ」

「……じゃあ、焼く」
「はいよー」

私と総司が遅刻すると、必ずと言って良いくらいの確率ではじめくんの説教が始まる。
校門の前で正座させられるのだが、はじめくんの説教がそれはもう長い長い。

総司の言う通り、朝ご飯抜きで挑むのは無謀な気がした。

「いただきます」
「いただきまーす」

「うん、うまい」
「うまいねー。あ、遅刻したらさ、薫に会えるね」

薫、と言う名前に、総司は思いっきり顔をしかめた。
薫というのは千鶴ちゃんの双子の兄で、色々話しているうちに(主に千鶴ちゃんのこと)仲良くなったのだ。

「僕、あいつ嫌い」
「えー、可愛いじゃん薫」

「全っ然」
「確かに総司とは合わないかもねぇ」

「そうそう、合わないの」
「ん、今何分?……うわ、あと七分でチャイム鳴るわ」

「そろそろ行く準備しようか」
「うん、皿ちょうだい。洗うから」

「じゃあ僕は拭きます」
「頼みまーす」

「こちらこそ頼みまーす」

皿を片付けて、歯を磨いて、総司と共に寮を出る。
時計を見るとちょうどチャイムが鳴る時間で、遅刻は確定してしまったようだ。

はじめくんと言うラスボスを目指して、勇者もとい遅刻者二人は歩き出すのであった。



06.突撃、遅刻者の朝ご飯!
(あ、やっぱりはじめくん居る…)
(うわぁ、あれは怒ってる顔だ…)






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