作品 | ナノ



やっと見つけた。


フィールドを駆け抜ける姿は、いつかの昴そのものだ。いつもは弱いのにサッカーをしている時だけは一人で走り回ることができたその女の子が、今俺の眼下で仲間と笑い合っている。
あの日、俺は昴を手放した。ずっと守り続けていくと誓ったたった一人の小さくて弱い彼女を、ついには守り抜く事が出来なかった。遠ざかって行く車に手を振ることも追いかけることもせずに、ただただ立ち尽すまだ小さかった俺。記憶の中にやわらかく広がる星空、昴の泣き顔、今だって鮮明に思い出せる。彼女との思い出は、いつだって俺の星で、道しるべだった。ああ、やっぱり俺はこの水色と黄色のコントラストが輝く景色じゃないと、駄目なんだ。

こんな日を、こんな時をどれ程までに待ち望んでいたことだろうか。来る日も来る日も焦がれた人が今、ここにいる。やっと会えた。


けれども俺は、確かにその時から違和感というものを感じ始めていた。俺の知っている昴はこんな笑い方をした?あの、困ったような淡い笑顔が好きだったんだけれど。昴自身が心の奥底から幸せな時にしか見ることができない、正直な笑顔。俺が求めたのはそういう昴だった。
改めて昴を見下ろすと、その人はゴールを見つめてまた笑んだ。確かにそれはそれはとてつもなく美しかったけれど、違う。そんな不敵な笑い方、しなかった。

幾年もの間会いたかった昴はきっと、あの笑顔の裏に隠されてしまっている。だったら取り戻してあげないと、救ってあげないと。今度こそ、必ず守るから。

砂埃が舞って、昴がこちらを見た気がする。俺は踵を返した。またね昴、次君が会うのは俺じゃなくてグランだ。グランは強い。君も必ずわかるはずだよ。





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テーマ「人外ファンタジー」
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