遠い昔の話しをしよう。


今は地図から消えた、小さな国があった。男は作物を育て、女は織物をし、子供は走り回る。そんなどこにでもあるような平穏な国は、魔族の領土である人間の国だった。


平穏な日々が壊れたのは突然だった。


空には暗雲が立ち込め、大地は割れ、水は枯れた。愚かな領主は税金を上げ、山賊が頻出し、その国は廃れた。
浅はかな人間は我等人間の忠誠を疑い眞王が怒っているのだと囁いた。
そして、眞王への忠誠の証として三人の娘をいけにえとして出した。
青い瞳の娘。赤い瞳の娘。緑の瞳の娘。ありもしない怒りに恐れ、代償として死んだ娘達。
私は彼女たちが不憫でならなかった。


私は問う。


もし、ここではない幸せな世界で生きられるのならば何を望む?


青い瞳の娘は答える。


私は月が欲しい。闇夜を照らす美しい月が欲しい。


私は愚かだと思った。
太陽がなければ輝くこともできないはかない月を求むか。


赤い瞳の娘は答える。


私は鏡が欲しい。死んだ姉と同じこの顔を見る鏡が欲しい。


私は憐れだと思った。
自分を愛することを捨て還って来ない姉を求むか。


緑の瞳の娘は答える。


私は雪が欲しい。世界を白く美しく閉じ込める雪が欲しい。


私は哀れだと思った。
春を忘れ彩花を閉じ込めた色のない世界を求むか。


私は言う。


月を求める娘
お前には全てを照らす太陽を


鏡を求める娘
お前には全てを包む愛を


雪を求める娘
お前には全てを溶かす春を





あたえよう。







カケラ物語





 
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