立海大テニス部は順調に決勝へとコマを進めた。決勝相手は青学。例の一年生がいるところだ。
結菜は願った。勝ってください。優勝してください。でないと幸村くんは………。








幸村の手術当日。白いガーベラの花束を持って幸村の病室に訪れた。
幸村の母親が手術室の前で一緒に待っていてもいいと言ってくれたが、なんだかそれは違う気がして丁重にお断りした。


「幸村くん、いってらっしゃい。頑張ってね」
「いってきます」


手術は難しい。100%成功するとは言えない。
幸村がいつもいた病室で一人、いつものようにパイプイスに座り、冷たい手を握りしめて結菜は祈る。幸村の手術が成功しますように。どうか、どうか。


―――どれぐらい時間がたったのだろうか。日がだいぶ西へ傾いている。


ガラッ


開かれたドアを振り返ると幸村の担当である看護婦がいた。彼女は頬を紅潮させ興奮した声と表情言う。


「幸村くんの手術が、成功しました」


全身を、血が駆け巡る。
ドクン、ドクン。心臓の音がありえないほど大きく鳴る。冷たかった手にぬくもりが戻り、そして…
涙が零れた。


「よかった…よかったぁ……!!」


泣き崩れる結菜を看護婦は駆け寄り抱き留めてくれた。幸村は生きていられる。それが嬉しくて嬉しくて…。結菜は小さな子供みたいに泣いた。







麻酔で寝たままである幸村の顔を見て、その日は家に帰った。


そして、次の日に結菜はテニス部が決勝戦で負けたということを知った。


結菜は理不尽な怒りを覚えた。どうして。勝つって言ったのに。どうして!どうして勝ってくれなかったの!
スポーツの世界とは厳しい世界で、真田たちは一生懸命試合をしてその結果が敗北なのだ。仕方がない。気持ちだけではどうしようもないことなのだ。
理解しなくてはならない。理解したい。けれど、悔しくてたまらない。
勝ってほしかった。何がなんでも、勝ってほしかった。でないと幸村は、無理をする。動かない体に鞭を打って、テニスをする。勝って、ほしかった。


幸村がいなくても立海は全国大会を優勝できるのだと、証明してほしかった。







カランコエは花を咲かせない



自分の心の醜さに結菜は悲しくなる。幸村くんに恋をする資格なんて、私にはなかったのかもしれない。





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