ファンタジー的な物語やテレビは現実にはありえないことだから楽しめることだと思う。でも、それらが実際自分の身に起こった場合。私はどうするんだろう?







鬱蒼と茂る森の中に私はいた。それだけでも十分ありえないことなのに、ハリウッドに出てきそうな城や空飛ぶ骸骨が視界に入るものだから私の脳は思考を止めた。えぇ、と…。


「ここ、どこ?」


池に落ちただけでどうしてこんな場所に流れ着くの?だって湖だよ?なんで流れ着くの?
頭がこんがらがり、もう意味が分からなくて泣きそうだ。
こんな非現実的なことを明るく受け止められるような、そんなどっかの友人二人みたいな精神を私は持っていない。


これは何?何なの?
勝手にみんなから離れたのが悪かった。本当に。心から反省しています。だから早く私の平凡な日常を返してください!
いや、それともこれは夢?それなら今すぐに私を起こして、今すぐに!!


どれだけ願おうとも目の前の状況は変わらない。めちゃくちゃに叫んで喚き散らしたかった。けど、ここは何がいるか分からない森の中。そんなことは出来ない。代わりに溢れてくる涙が、無性に虚しかった。


気が済むまで泣いた私は一緒に流れ着いた少年の様子を窺った。意識を覚まさないけど目に見える所に外傷はないし、多分大丈夫だろう。
そもそもの元凶は全てコイツだ。人の気も知らないで眠っている顔をひっぱたいてやりたい。


そんなことを思いながら私は無事だった荷物の中から弓と矢を取り出した。少し湿っているけど大丈夫みたいだ。
むやみに動くのは危険だ。少年が目を覚ますまで、私がこの少年を守ってやらなければ。…なんで私が男を守らなくちゃいけないんだちくしょー。


少年が目を覚ましたらいろいろ請求してやると心に固く決意し、辺りに神経を張り巡らさせた。


風の音。葉と葉が擦れ合う音。鳥の鳴き声。地面を踏む…音。人の足音じゃない。馬…馬の蹄の音だ。その音はだんだんとこっちに近付いて来ている。


恐怖心と緊張が私の体を襲う。弓を絞り音が聞こえてくる方へ意識を強めた。


現れたのは馬に乗った二人の男だった。一人は茶色の髪をし、もう一人は銀色の髪をしている。どっちとも日本人ではなく、信じられないほど整った顔をしていた。
弓を構えた私を見て二人は驚いたような顔をしたが、すぐに警戒したような顔になる。


正直私は恐くてたまらなかった。二人の腰にあるのは間違いなく剣だ。私はいつ斬り殺されてもおかしくないんだ。手足が震え、矢を握る手が汗ばむ。


二人の視線が私の傍で倒れている少年の方へ向く。その瞬間二人は慌てたように馬の鐙から腰を上げた。


「動かないでっ!」


私の声じゃないみたいな掠れた声が出た。二人は震える私を見て怪訝そうに顔を見合わせる。


「あ、あなた達は誰?こ、この人に、変なこと、しようとしたら、い、射るわよっ!」


恐くて恐くてたまらない。自分が何を口走っているのか分からない。どうしてかは分からないけど、ただこの少年を守らなくちゃという想いだけがあった。


「…弓を下ろしてくれ。俺達は君や彼に害を加えるつもりはない」


茶色の髪をした男が私を宥めるかのような優しい声音で言った。それでも弓を下ろさない私を見て二人は腰にある剣を放り投げた。


「これで、信じてもらえるかな?」


それでも私は気を抜くことが出来なかった。
その時、小さな呻き声が私の横からした。少年が目を覚ましたのだ。上半身を起こし、少年は頭を被り振りながら辺りを見渡す。


「コンラッド、ギュンター」


男達が安堵したように息をつく。知り合い、だったんだ。
そう理解した私は弓を下ろし、崩れるようにしてその場にへたりこんだ。少年が驚いたように私の方を見る。


「君、どうしたの?顔真っ青だよ。汗もひどい…」
「ユーリ。この娘は知り合いですか?」
「いや、知り合いと言うか通りすがりと言うか…あれ?」


少年は目をしばたたかせる。


「ここ…眞魔国だよな?なんでこの娘がここにいるんだ?」


シンマコク?
それがこの意味の分からない世界の名前なの?私はぼんやりする頭でそう考えた。


「陛下。とりあえず城へ行きましょう。そのままでは風邪をひかれてしまいます」
「あ、うん。分かったよギュンター。…君、立てる?」


少年が私に手を差し延べた。男の手なんて借りたくなかったけど、自力ではとてもじゃないけど立てそうになかった。


「よっ、と。大丈夫?」


頷く私を見て少年は安心したように微笑む。そのまま馬に乗せられ、私はその場を後にした。






目を覚ますとそこは



気が付けば私はの周りに男三人。ふざけんな神様。私がいったい何をした。





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