「ルナって実は好きな人がいるんじゃないの?」
「…何、いきなり?」
「なんかルナって男嫌いって言って男を全体的に避けている感じがするんだもん」
「そ、う…?」
「あ〜、なんか分かるかも。必要以上に関わりたくないオーラ出てるし。でもなんでそれがルナに好きな人がいるに繋がるのさ」
「だってほら、この人好き〜!って思っていても別の人をよく見たらやっぱりこっちの人が好き〜!ってなって最初好きだった人のこと忘れたりしない?」
「…それ、アイドルの話し?」
「うん」
「このミーハーが…」
「でね、新しい人を好きになった後に前好きだった人のことを考えると自分が情けなくなるんだよね。こんなにグッズ買って昔の自分は何を考えていたんだ!って」
「はぁ…」
「だからあたし、人を好きになるのが怖くてテレビや雑誌をまったく見ない時があったの…」
「いや、んなアンニュイな顔されても…。アイドルの話しだよね?」
「そこであたしは思ったの。好きになった人みんなを好きで居続ければいいと!」
「あ〜…博愛主義ってやつ?」
「うわー、すごいネー」
「で、なんかあたしはルナがその時のあたしに似てると感じがするの」
「ごめん、一緒にしてほしくないかな」
「つまりあれか。好きな人を忘れたくないから男を避けてるってやつ?」
「そう!そんな感じ!」
「ねぇ、アンタら。人の前で人の考察するのやめない?…というか、そんなことある訳ないでしょ」


内心の動揺を悟られないように必死に押し隠し、飽きれ顔を浮かべる。


私は、嘘をついた。











どうしてだろう?
どうしてこんなに緊張しているんだろう?


訳の分からない思いにかけられながら私は陛下の扉をノックした。
すぐに「どうぞ」と言う声が聞こえ、私は深呼吸をしてから扉を開ける。



「失礼します。陛下、お茶をお持ちいたしました」


私が入ると陛下は満面の微を浮かべた。五日ぶりに見るその笑顔に自然と私の頬も緩みそうになる。
慌てて顔を引き締め、陛下のもとへ行きお茶をつぐ。


「ありがとう、ルナ」
「いえ。…長旅、ご苦労様でした」


陛下が外交から帰って来たのは昨日の夜。寝ていた私は出迎えが出来なかった。
帰ったばかりなのにこうやって仕事をしている姿に素直に感心する。私と同じ高校一年生なのに、とても立派に見える。


「…まだ疲れがたまっているのではないでしょうか?今日はのんびりなされてもよろしいのでは?」


私が言うと、陛下は優しく瞳を細めてられた。その瞳にドキッと胸が鳴る。


「ありがとう。でも、これ以上ルナに迷惑かけられないしね。頑張って仕事を早く終わらすよ」


陛下の言葉に私は息を飲む。
…陛下は私のために無理をして頑張られているの?
私を早く元の世界に戻すために…。


「あ、あの!」
「ん?何?」
「…無理、なさらないでください」


今まで散々早く帰りたいと言っていたくせに、私は何を言っているんだろう。
気恥ずかしくなって私は俯いた。


「私、ここでの生活が結構気に入っています。城で働くのは楽しいし、皆さん優しいし…。それに、アニシナさんというよき理解者にも出会うことが出来ました」


俯いていた私はアニシナさんの名前を聞いた時陛下の顔がひきつったことに気付かなかった。


「だから…その…」


私は無性に恥ずかしくなって二の次が告げなくなる。

「…ありがとう」


パッと顔を上げるとそこには陛下の嬉しそうな笑顔があった。
くすぐったい気分になって、私は陛下に微笑み返した。


「っ……」


陛下は私からバッと顔をそらす。


「陛下?顔が赤いようですが…まさか熱ですか!?」
「ちちちち違う!なんともないから気にしないで!そ、そう!ルナに渡したい物があったんだ!」
「私に…ですか?」


陛下は机の引き出しから何かを取り出し、私に差し出した。


「これ…」


それは綺麗な青色をした髪飾りだった。


「ルナに似合うと思って…。ルナの髪長いし、仕事の時に邪魔になる時もあるかなって。せっかく綺麗な黒髪なんだから」


照れたように陛下は笑う。
私はギュッと髪飾りを握りしめた。その気遣いがとても嬉しかった。


「ありがとうございます、陛下。大切に使わせてもらいます」
「…うん」


陛下は嬉しそうに微笑んだ。
この笑顔、好きだな。なんだか安心出来る。懐かしい気持ちになる。





夜、寝る前に私は今日陛下からいただいた髪飾りを手に取り見つめた。


「陛下…」


陛下は優しい人だ。
優しくて温かい笑顔を向けてくれる。


まるで…


「ゆーちゃんみたい…」


私は髪飾りを置いてベッドの中にもぐり込む。


『ルナって実は好きな人がいるんじゃないの?』


『好きな人を忘れたくないから男を避けてるってやつ?』


『そんなことある訳ないでしょ』


私は嘘をついた。


「ゆーちゃん…」


夢の中だけで会える、大好きな人。








重ね続けた想いと嘘



どうか、こんな私を愚か者だと嘲笑わないで。





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