「お茶、ください」


……え?
イタチ、若返った?


ちっちゃいイタチが目を吊り上げて私を睨むように見て紙を差し出してくる。困惑しながら反射的にそれを受け取る。
紙にはお茶の名前と量が書かれていた。「少し待っててね」と笑顔を向け書かれたお茶を用意する。
袋に入れて渡すとお金を渡された。うん、ぴったりだ。しっかりしたお母さんだな。ミコトさんらしいや。


…というか、この子、サスケくんだよね……?
目線を合わせるためにしゃがみ込む。


「えっと、サスケくんだよね?」
「……うん」


私から視線をそらしサスケくんは頷く。…あれ?私もしかして嫌われてる?まあ、理由はすぐに見当がつくけど。


「はじめましてだね。うちはアカネです。お兄さんやお母さんからサスケくんの話しはよく聞いているんだ。よろしくね?」


口を一の字に結びサスケくんは何も言わない。…可愛いなぁ……。


よく見るとイタチとはそんないうほど似ていない。纏う雰囲気も違う。まあ、イタチみたいなやつが二人いたら困るけど。


「今日はお使い?」
「…うん」
「そっかぁ、偉いね。よし、それじゃあこれはご褒美」


そう言ってポケットに入っていた小袋に入ったチョコレートを取り出す。最近のマイブームでポケットに入れて仕事中とかこそっと食べてたりする。
サスケくんは一瞬顔を輝かせ、すぐにはっとした表情を浮かべた後、眉を吊り上げ仏頂面を作りそっぽを向く。しかしチョコレートは欲しいらしくちらちらと視線を向けている。ややあって、チョコレートを取ったサスケくんはちらりと一度こっちを見て再び目をそらし小さく「ありがとう」と言った。…何この子可愛い……。本当にイタチの弟なの?可愛いわ…。
どういたしまして、そう言うとサスケくんは小さく頭を下げて走り去って行った。…うん、可愛い。


小さくなっていく背中を見ていると胸の中に沸き上がった醜い感情。…嫉妬ってやつかな。情けない。










その日の夜、サスケくんが来たことをイタチに言うと嬉しそうに笑った。罪悪感で胸の中がざわつく。


「いい子だね。それに可愛い」
「だろ?」


兄バカ全開のイタチ。サスケくんの話しをする時はいつも笑顔の垂れ流しだ。私はそんなイタチを見るのが好きだったりする。
平和のために。里のために。それを前提で考え行動するイタチにとってサスケくんは唯一の例外だ。イタチはサスケくんのことを何よりも大切に思っている。サスケくんがいるからイタチは本当の孤独ではないし、道を踏み外すこともない。それが嬉しい。


でも、どうして私じゃなくてサスケくんなのか、そんなふうに考えてしまう。私だってイタチに一番に愛されたいもの。…それぐらいの独占欲を持つことぐらい許して欲しい。私がサスケくんに敵うことはないのだから。……悔しい。
でも、サスケくんだって私に大好きな兄さんをとられたと思っているのだろう。私を睨みつけていたサスケくんを思い出し私は苦笑する。


「アカネ?どうした?」
「んー?なんでもないよ」


私の返事が気に食わなかったのか、イタチは眉を寄せた。そして私を後ろから抱き寄せる。イタチの腕の中におさまった私の体。温もりが伝わってきて安心する。


「ん…」


ついばむような口づけを何度も繰り返す。この瞬間、イタチは私だけのモノなんだっという満足感で胸が満たされる。


「アカネ…」


イタチの瞳が熱をおびる。私を求めている。


イタチは最近頻繁に私の家に来るようになった。そして私を必死にかき抱く。縋るように。
最近は忙しいという対面でろくに家族とも顔を合わせていないようだ。店にやって来るミコトさんの顔も暗い。


イタチを愛して。愛されて。私はどんどん欲深くなっていく。
イタチを支えたい。その一心だった想いが変わり、イタチが傷付かないように守りたい。そんなふうに願ってしまうのだ。なんの力も持たないただの人の分際で。イタチの一番ですらない女が。


「アカネ…?」


イタチが私の顔を覗き込む。私は、泣いていた。


「私も忍だったらよかった」
「アカネ…」
「そしたら、イタチと一緒に戦えたのに」


こんなふうにぶざまにイタチの前で泣くことなんてなかったのに。


「…俺はアカネが忍でなくてよかったと思っている」
「………」
「お前の笑顔や涙はとても綺麗だ。それはお前が忍ではないから浮かべるものだ」


イタチの指が私の頬をつたう涙をぬぐう。


「お前の存在が、俺の力になる」
「…っ」


私はイタチの首に抱き着いた。


「好き…」
「俺もだ」
「好き、好き、好き」


好き。そう伝える以外にこの溢れる想いをどうすればいいのか分からなかった。
ごめんなさい。サスケくんに嫉妬してごめんなさい。そんな醜い感情を持ってしまってごめんなさい。イタチの幸せを綺麗に願う女じゃなくてごめんなさい。私がイタチの幸せになりたいだなんて願ってごめんなさい。愛されているのにこれ以上愛されることを望んでごめんなさい。


私はイタチの幸せを願うよ。イタチの幸せのために、私はここで笑って待っているよ。








聖女の夢を見る



イタチの中の私がずっと綺麗でありますように。




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