ひらひらひらひら
桜が舞う…


今日は卒業式。
教え子達が卒業証書を持ち、友達、または家族と喜び合っている。その顔はどれも希望に輝いて…
自分の元から旅立つ教え子達を見るとなんだか切なくなる。


「センチメンタルになっているところ悪いんだけどさぁ…」
「……何よ」


人がしんみりと感傷に浸っている時に空気の読めない顔を半分隠した変質者が私に話しかけ、


「桜なんてどこに咲いてんの?今のそこに咲いてるのは梅じゃない?」


そんなことを言ってくる。


「卒業式と言ったら桜でしょ。梅なんて脳内でフィルターかけて桜に変換しなさいよ」
「…お前、いい歳して何言ってんの」


その上失礼なことを言ってくるのでとりあえず殴っておいた。


目線を教え子達の方へと戻す。
いたずら好きだった子。大人しかった子。授業中いつも寝ていた子や何かしら食べていた子。勤勉だった子や天才だった子。そして、落ちこぼれの問題児。
みんな、み〜んな、私の大切な教え子達。


「寂しいなぁ…」


ポツリと呟くとぽんぽんと頭を叩かれた。


「…カカシ〜」
「何?」
「私の教え子いじめないでね」
「…俺に子供いじめる趣味はないけど?」
「だって、カカシが受け持った卒業生で下忍に合格した子いないし」
「まあね」
「カカシの試験方法に文句はないよ?間違ってないし。でもねー、可愛い教え子の夢をたたれるのは辛いんですよ、アカデミー教師としては」
「…可愛い教え子が未熟なまま忍になって任務で死ぬよりは大分いいと思うけど?」
「うん、そりゃね」


分かってるよ。
分かってるけど…


「私達教師はあの子達の夢と希望を与える側なんです」
「俺達は夢と希望を持った子供に現実を突き付ける側だ」


おお、うまい切り返しだ。私が笑うとカカシも目を細めて笑った。


「…みんなが自分の夢見た通りの人生を歩めたらいいのにね」
「無理に決まってるでしょ」
「うっさい。分かってるよバカ」


カカシは大きなため息をつき私の頭をガシガシと掻き回す。痛いんですけど。


「せんせ〜!!」


わんぱく集団が駆け寄って来た。私は乱れた髪を直してしゃがむ。


「先生先生!俺らまた先生に会いに来るから寂しがるなよ!」


…なかなかませたことを言ってくれる。思わず頬が緩んだ。


「うん、待ってるよ」
「おう!」


わんぱく集団はガヤガヤと騒いだ後、母親達の元へと戻って行く。


「立派になるといいな」
「…うん。まあ、上忍になったはなったで教え子に抜かされたってことで悔しいんだけどねー。つかムカつく」
「………」
「切ないなら悲しいやら愛しいやら憎らしいやら…はぁ……」
「…大変ね」
「本当よ」


ため息と一緒に微笑みが零れた。子供は無限の可能性を持っているから恐ろしい。


「さて、と」
「どうした?」
「ん〜、何年も卒業出来ない問題児がいてね。その子をどうやって卒業させるかイルカ先生と相談してくる」
「そりゃ…大変ですね、先生」
「まったくですよ」


そう言いながらも私の口元には微が浮かんでいるだろう。


「じゃあね、カカシ」
「あ、なあ。また今度なんか食べに行かない?」


おお、カカシの方から誘ってくれとは…。
……私もそろそろ独り身から卒業したいしな。


「うん。行く」
「よし。じゃあ、またな」
「うん、またね」


ひらひらひらひら
舞う桜はないけれど…


「…すぐ咲くよね」


今、小さな蕾があるのだからから。












芽吹く蕾に木漏れ日を




旅立つ子供達に幸あれ。





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