「…うわぁ……」
サソリの部屋に入った私はドン引きした。それはもう盛大に。いやいやいや、これはないって。
「これって人権の損害ってやつ?」
「ごちゃごちゃとうるさい。邪魔だ。出て行け」
「いや、自分とそっくりなカラクリを見ちゃったら誰だって戸惑うって。何勝手に人をモデルにしてるんですか。アンタ私にぞっこんラブですか」
「そんな訳ないだろうが」
「…照れ隠し?」
「殺すぞ」
うわっ、目がマジだ。
だからといってすごすごと部屋から出て行く気はないので私は自分そっくりなカラクリに近付きじっくりとそれを見る。自分と同じ顔を見ているなんて変な気分だ。
「これ、強いの?」
「そんな訳あるか。お前似のカラクリだぞ?すごく弱いに決まっている」
「…あっそ」
今すごく殺意が湧いたんだけど。そりゃ、すでに上忍のサソリにとってこの前中忍に就任したばかりの私なんて赤子の首を捻るようなものかもしれないけどさ…。
「どんなカラクリなの?」
「自爆カラクリ」
「酷くない?それ酷くない?いくらなんでも酷すぎない?人にそっくりなカラクリを勝手に作っといてそれは自爆カラクリって酷すぎるだろ!!」
こいつには血も涙もないのか!?カラクリを作りすぎて自分もカラクリになったのか!?
「なんで私こんなやつが好きなの!?」
「俺が知るか」
サソリは作業を止めずに言い捨てた。私はサソリの前に回り込みジッとサソリを見つめる。
「ねえ、なんでコレを作ったの?」
「………」
「勝手にモデルにしたんだからそれぐらい言いなさいよ」
サソリは一瞬だけ手を止め私を一瞥した。カチャカチャと私にはよく分からないカラクリ作りの作業をしながら面倒臭そうに言う。
「別に深い意味はない。ただ、死ぬならお前の腕の中がいいと思っただけだ」
「………」
「忍の体にはいろんな情報があるからと言って死体をいじくりまわされるのは嫌だからな。だから俺は自分の死体を残すつもりはない」
だから自爆カラクリにした。サソリは平然とそう続けた。カチャカチャ。サソリが作業する音が広くも小さくもない部屋に響く。
私はというと、頭から湯気が出るかと思った。それぐらい私の体温は今高い。
「サソリ…」
「………」
「好き」
「聞き飽きた」
「…サソリは私のこと好きになってくれないの?」
「ないな」
両親を戦で亡くしたサソリは大切な人が死ぬことを恐れている。前にチヨバア様が教えてくれた。
ただでさえ社交的とは遠い性格なのに、カラクリ作りで引きこもりなため人から疎まれることが多い。だからサソリは昔から変わらず接する私との絆をとても大切にしているんだということも教えてくれた。
「私はサソリが好きだよ。こんなカラクリなんていらないよ。私はサソリの傍に死ぬまでずっといるから。ううん。死んでも傍にいる」
サソリは手を止め私を見た。そこから私は感情を読み出すことは私にはできなかった。
でも…
「なら、ずっと俺に片思いでもしてろ」
「…うん」
傍にいることを許してくれたから、私は二人の絆を幸せに想う。
絆と呼ぶには甘すぎる
そんな二人の繋がり。
企画『片恋ウイルス』様に提出。
ありがとうございました。