「カカシせ〜んせい!」


屋根の上で寝転がって本を読んでいると名前を呼ばれた。またか…。胸中でため息をつき、本から目をそらしてそっちを見た。


「またお前なのネ」
「えへへっ」


呆れながら言うと何故か教え子は嬉しそうに笑って俺の横に座った。


「ここ、見晴らしいいねー」


呑気な様子に自然とため息が零れる。


「こんなところいたってつまらないだろ?ほら、子供は子供と遊んできなさい」
「ぜーんぜん。好きな人と一緒ならどんな場所でも幸せなんだよ。先生知らないの?」


え、何その上から目線?いやそれ以前にいろいろ言いたいことはある。


「お前はまだそんなこと言ってんの?」


俺の言葉にムッとしたらしく大きな瞳で睨んでくる。その瞳は子供らしい純粋な色をしていた。


「私の気持ちは変わらないもん」
「はいはい」


受け流して本に目線を戻すと本をひったくられた。


「先生、私本気だよ?本当に先生のこと好きなんだから」


一回り近く離れた子供に言われても正直困る。好意をもたれることは嬉しいが相手が相手だ。言っとくが俺にロリコンの気はない。体を起こし向き合うと、しかめっつらだった顔が途端に破顔する。こういう無防備な笑顔を見せられると、本当参ってしまう。


「お前はさぁ、俺にどうして欲しいの?」
「え、別に」
「……は?」


予想外の返答に間抜けな声が出る。別にって…。


「私は子供で先生は大人。しかも下忍と上忍。先生にとって私は恋愛対象じゃないことぐらい分かってる。でもね、私はカカシ先生が好き」


真っ直ぐな瞳。子供だけが持っている純粋な心を表した瞳が俺を見上げている。


「別に先生に恋人がいたっていいの。私だって先生以外の恋人作るだろうし」
「……は?」


またしても間抜けな声だ出る。何を言いだすんだコイツ。俺のことが好きなんじゃないの?


「先生結婚したっていいよ」
「…いいんだ?」
「うん。恋人がいようが、奥さんがいようが私が先生もらうから」


にっこり笑うその表情は無邪気だが言葉に薄ら怖いものを感じる。


「お母さんが女は恋をしたら綺麗になるんだって言ってた。私はたっくさん恋をしてどんどん綺麗になるの。で、いつか先生を落としてみせる」
「………」


俺を見上げている瞳は獲物を絶対逃がさないヘビのような瞳に代わっていた。純粋な瞳はどこへいった。


「私は先生が好き。ずっとずっと大好き。今は子供だから仕方ないけど、大人になったら絶対先生を私のものにする」


きっぱりと言い放たれた言葉に俺は唖然とするばかりだった。笑って済ますことが出来ないすごみがそこにはあった。


十年後、もし俺が結婚して子供がいたとしても俺はコイツに惚れて家庭を捨てるのだろう。最低過ぎるぞ俺。
そんな男にはなりたくない。


「俺は結婚しないよ。恋人も作らない」
「え?」


不思議そうに小首を傾げる子供。こんな子供に俺の人生は振り回されている。


「お前が大人になるのを待っとくよ。だからお前も他に恋人作ったりするなよ」


そう言うと子供らしくない笑顔をは浮かべてコイツはこう言った。


「先生。実は私のこと好きでしょ?」








そうかもしれない



「とりあえず、明日の中忍試験に合格することだな」
「うん!」





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