ぱちぱちぱち


ここが図書館だと配慮して、俺だけに聞こえる小さな拍手を彼女は送ってくれた。


「すごいね、渋谷くん!こんな難しい問題が解けるなんて」
「いや、そんなことないよ」


そう言っても誉められて悪い気はしない。しかも相手は気になっている女の子。むしろ凄く嬉しい。


たまたま親父に頼まれた本を捜しに市の図書館へやって来た俺は同じ中学だった彼女に出会った。彼女とは高校は別々で、高校に入学していらい会ったことはなかった。実は中学生時代俺はほんわかしか彼女の雰囲気が好きで、少なからず好意を持っていた。結局何もないまま卒業し、月日は流れた。


この偶然の再会を見過ごすわけにはいかない。机で勉強している彼女に話しかけると、俺のことをちゃんと覚えてくれていた。


なんでも彼女は学校の勉強についていくことが出来ず、毎週図書館で勉強しているそうだ。確かに中学の時も彼女は勉強が苦手そうだった。
彼女が苦戦していた問題がたまたま俺が習ったばかりの問題で、解き方を教えてあげると彼女は凄く喜んだ。


「渋谷くんありがとう!」


彼女の笑顔を見て、昔の気持ちを思い出した。彼女が好きだ。


「…実は毎週俺も図書館に通ってるんだ。よかったら、勉強、教えようか?」


俺は嘘をついた。図書館に来るなんて何年ぶりだ。小学生以来来ていないかもしれない。でもそう言った方が彼女気兼ねしないと思ったから。


「本当!?ありがとう!」


輝くばかりの笑顔を彼女は俺に向けてくれた。


「これからよろしくね!」
「こちらこそ」


心よく了承したはいいが、ここで問題が発生した。俺の頭は平凡の平凡。決して頭がいい訳ではない。彼女に教えるからには俺も勉強しなければ、という訳で…。


「渋谷くん頭いいんだねー。尊敬しちゃうな」
「そういう訳じゃないよ。最近勉強のコツを見付けただけだよ」
「勉強のコツかぁ…私も自分に合った勉強方法見付けなくちゃね」


照れ臭そうに笑う彼女の姿を見て、無理して頭をよくする必要なんてないよと言いたくなる。そうしたらこんなふうに会えなくなるしなぁ…。
そんなふうに考える俺は嫌な奴だな。


「あのね、渋谷くん。今度の休み、暇?」
「えっ?」


暇も何も、今度の休みもここで勉強会じゃあ…。


「あ、あのね!映画のチケットもらったの!で、いつものお礼もしたいしよかったら一緒にどうかなぁ…って」


上目使いに俺を見る瞳。心なしか、少し頬が赤い。これは…もしかして、脈ありかっ!?


「よ、喜んで!」


そう言うと輝くような微を彼女は浮かべた。







「えっと…村田!これはどうやるんだ?」
「どれ?…ああ、これは判別式を使うんだよ。平方完成で出た答えをこれに代入して」
「えっと…ああ!こうかっ!」
「そうそう」
「サンキュー村田!」
「どういたしまして」


村田は肩を竦めて笑う。
今まで以上の勉強が必要だと判断した俺は眞魔国で勉強することにした。ここならどれだけ勉強してもあっちの世界ではまったく時間がたっていない。早い話しが勉強しほうだいだ。
村田という強い味方もいるしな。


「俺、魔王でよかったよ」







異世界の正しい使い方



陛下、それ卑怯。



 

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