嘘つき!
そう言い、人は僕を指さす。


幼かった頃、前世の記憶を持つ僕は回りにその記憶の断片を話していた。回りはみな僕を嘘つき呼ばわりし、親でさえその話しをすると顔をしかめた。
おかしなことを言っているつもりなどなかった。むしろ誇らしい話しをしているつもりだった。前世の僕は信念を貫き生きていたから。その姿は僕の憧れであった。幼い僕はどうしていつも僕が殺されるのか分からなかった。そのことに憤りを感じえなかった。


幼い頃は一人でいることが多かった。誰も僕と話したがらなかったから。そんな時、彼女と出会った。


彼女は僕の話しを楽しそうに聞いてくれた。敵と戦うところではハラハラ。勝利したら手を叩いて喜び。僕が死ぬ時は涙を流した。
嬉しかった。彼女と一緒にいることが幸せだった。


彼女が引っ越すこととなった頃には僕は物事の分別がつく子供になっていた彼女以外の友達もいた。それでも彼女は特別な存在だったから、もう会えないすごく悲しかった。


前世の話しを僕はもうしなくなった。理解してもらえるとは思わなかったし、理解しともらおうとも思わなかった。
僕の胸の中には彼女がいるから、それでよかった。







「健ちゃん?」


彼女と別れてからどれだけの年月がたったのか、もう数えることもやめていた。そんな時彼女は僕の前に現れた。


「健ちゃんだよね?久しぶり!元気にしていた?」


別れた頃と変わりない、明るくて純粋無垢な笑顔で彼女が僕の前に立っている。
驚きで思考が停止した。それからじわじわと胸が温かくなる。


ねぇ、君は覚えているかい?僕が話した前世の話しを。その中の一つにあったよね。僕が異世界の大賢者だったという話しが。実は僕、その異世界に行ったんだ。前世の知り合いにもあったよ。
君はまた笑顔で話しを聞いてくれるかな。お互いもう高校生で、いい年だし無理かな。君に否定されたら僕はすごく悲しいけど、それでもいい。


君に僕の話しを聞いてほしいんだ。


ぶらんこ乗り(いしいしんじ)
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