出たな!怪人ベネーベッサ!!
正義の味方、アリス様が来たからにはもう悪さは許さない!!
召喚!魔王よ!我に力を!!
いくゾ!!
魔王アタァァアクッッ!!!!







「と、いう夢を見ました」
「つっこみどころ満載な素敵な夢だね」


にっこりと笑う健ちゃん。
うん、まさにその通りだとあたしも思う。
怪人ベネーベッサってなんだよ。聞いたことねぇよ。そもそもあたしは正義の味方なんていうキャラじゃない。正義の味方がくりだす魔王アタックって何?正義の味方は魔王を倒すもんだろ。何魔王味方にしてんだよ。魔王が味方な時点で悪だよ。実は怪人ベネーベッサが正義の味方なんじゃないの?えっ?じゃあ、あたし悪?やられる側?嫌だよそんなの。


「勝った方が正義だよね」
「う〜ん…。それについては同意しかねないかな」
「なんで?」


健ちゃんは苦笑するだけで何も答えずスープを飲んだ。
十人以上座れるんじゃね?的なでっかいテーブルであたしと健ちゃんは朝ごはんを食べている。
クロワッサンにサラダ。ベーコンエッグにコーンスープ、それからフルーツの盛り合わせ。せっかく用意してもらったのに悪いけど、低血圧なあたしは朝ごはんを基本食べないんです。
でもまったく手をつけないのは申し訳ないので、少しは食べたけどもう無理。これ以上食べたらリバースする。


出してもらったミルクティーを飲みながら健ちゃんが食べ終わるのを待つ。このミルクティーめちゃんこおいしい。


「夢は願望の現れって知ってる?」
「知ってる」


中学時代の友人達にもよく言われた。あたしは昔からよくバトロアやホラーな夢を見る。夢の中のあたしは武器を持ったら友達だろうがなんだろうが殺る。でも不思議なことに親友二人はそういう夢に限って出て来ない。出て来たとしてもバトロアの主催者だったり見物人だったり。とにかく安全なところにいる。特に腹黒い方。逆らったらダメだってあたしの脳はそうインプットしてるのか。
男嫌いな腹黒ネーサンが笑いながら男どもを銃で殺しまくっている時は怖かった。リアル過ぎる。それをネーサンに言ったらしばかれた。痛かった。


「アリスは正義の味方になりたいの?」
「いや、まったく」


即答すると健ちゃんは笑った。


「人間はね、寝ている時に脳の中の情報を整理するんだ。それが夢となる場合もあるらしいよ」
「ああ、なるほど」


納得。
だって、いきなり異世界にやって来たってだけじゃなく実は健ちゃんは魔族です〜的な衝撃的事実を知ったり、この世界には魔王がいて健ちゃんはそいつの味方で、その魔王はあたしと同じようにあっちの世界で平凡に過ごしていた同い年の男の子で、明日…つまり今日あたしに会いに来るって言われたんだもん。
そりゃあんな夢見るな。うん。


「健ちゃんって魔法使えんの?」
「ご想像にお任せするよ」
「分かった」
「………」
「………」
「…ごめん。僕が悪かった。想像するのやめて」
「え、なんで?」


健ちゃんビーム出したり火操ったり天候を自在に操ったり、とても素敵な存在になってたのに。
なんか妄想楽しすぎてニヤニヤしちゃった。あ、だからとめられたのか。


「健ちゃんってさ、偉い人?なんか『猊下』って呼ばれてたじゃん」
「まあね。僕は大賢者の生まれ変わりだから」
「生まれ変わり?」


何、そのときめく単語!


「健ちゃんかっこい〜!」
「…そうかな?」
「うん!健ちゃん前世の記憶とかあったりすんの?」
「まあね」
「うおー、すごいね健ちゃん。前世の記憶とかあると脳の中こんがらない?あたしだったら何が何だか分かんなくなりそう」


そこで健ちゃんは驚いたように目を見開いた。…ん?あたしなんか変なこと言った?


「健ちゃん?」


健ちゃんは目尻を垂れ、口元に柔らかい微笑を浮かべる。…ただでさえドストライクな顔なのにそんな表情されるとドキドキがはんばないんですけど。


「君は面白い子だね」
「…そう?」


誉められてるのかどうか分かんないんですけど。


「猊下」


武装したお姉さんが入って来た。


「魔王陛下とその供の方々が来られました」
「ん、分かった」


健ちゃんが立ち上がったのであたしも立ち上がる。魔王かぁ…どんなんだろう?
ちょっとわくわくしながらあたしは健ちゃんの後について行った。







低血圧に朝ごはんは無理



うっ…
た、食べ過ぎた……



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