異世界ですよ、異世界。川に落ちたらそこは異世界ですよ。まさかのトリップ。ワンダフォー。
実は世の中なんでもあり?本当は空や海底に島とか城とかあったりすんじゃね?
そんな未知経験を体験出来るなんて…わっくわくしますね!
「お風呂いただきました〜!」
広くて豪華なお風呂を一人占めとか贅沢!用意してもらった服も着たことも見たこともない異世界を感じる服でテンション上がる!
「楽しそうだねー」
苦笑するムラケン君と武装したお姉さん達に案内されたそこは祈り場みたいなそんな場所だった。
「戸惑ったりとか不安だったりとかしないの?」
「えっ?なんで?」
「いきなり異世界に来たんだよ?帰れないかもしれないとか思わない?」
「えっ、さっそく帰らないといけないの?まだ全然異世界ライフ楽しんでないのに!?」
そりゃないよムラケン君!
ムラケン君はまばたきを数回してから「本当、面白い子だねー」と笑う。
「猊下。この方が言っておられた方ですか?」
可愛いらしい女の子の声が聞こえた。見ると、ムラケン君の後ろに髪のなっっっがい女の子がいた。
うわ、可愛い。お人形さんみたい。着てるの巫女服?すごいなぁー。
「そうだよ、ウルリーケ」
…ん?さっきの『猊下』ってムラケン君のことだったの?何、ムラケン君すっごく偉い人だったりすんの?
女の子はあたしに向かって微笑みかける。
「はじめまして、アリス様。私はこの眞王廟の巫女、ウルリーケと申します」
「あ、どうも。アリスです」
軽く頭を下げて会釈する。つか、巫女って…。何するんですか?どう見てもお守りや絵馬とか売っている巫女さんじゃないですよね?もしかして神の声が聞けるとかいう本やテレビの中の巫女さん?
聞くと「私が聞くのは神の声ではなく、眞王陛下の声です」と言われた。シンオウ陛下が誰なのか知んないけど凄いなぁ…!本当に本当の巫女さんが目の前にいるよ!
「つか、シンオウビョウって何?この建物の名前?」
「そうだよ。んでもって僕の家」
「マジ!?すごっ!!」
家持ってるとか何者だよムラケン君!ブルジョア?ブルジョアだよね!?
「…あの、アリス様」
「はい?」
「お話しを少し伺ってもよろしいですか?」
「んー?いいですよー」
ウルリーケさんは戸惑ったような目線をあたしに向ける。つか、ウルリーケさんって何歳?見た目あたしより下っぽいけどなんか上の気がするんだけど。思わず「さん」付けしちゃうし。
「あなたはどうやってこの世界へやって来たんですか?」
「えっと…ちょっと足を滑らせて川へ落ちちゃって気がつけばここに、みたいな?」
どうやってここに来たかなんてあたしもまったく覚えていない。ウルリーケさんは考え込むように下を向いた。
「……声を、聞きませんでしたか?」
真剣な眼差しでウルリーケさんはそう言った。…声?
「……あ…」
思わず零れた声にウルリーケさんとムラケン君がピクッと反応する。
「聞いた、かもしれない。よく覚えてないけど…川に流されて……そう、なんかスタツアみたいなの体験している最中に……。内容は覚えてないけど」
「やっぱり…」とそう呟いてウルリーケさんは黙ってしまった。横にいるムラケン君を盗み見るとなんだか難しい顔をしている。…なんか重要な意味でもあんの?
あたしの視線に気付いたムラケン君は何かをごまかすようににっこり笑った。
「えっと…」
ムラケン君のことなんて呼べばいいんだろ?胸中ではムラケン君って呼んでるけど…。
「村田君?ムラケン君?それともあえての健ちゃん?」
あたしの問いの意味を理解したムラケン君は楽しそうに笑う。
「僕的には一番最後の奴がいいかな」
「んじゃあ、健ちゃんで」
健ちゃんは微をこくして笑った。
「健ちゃん、あたしすぐに帰らなきゃダメだったりする?もう少しここに居ちゃダメ?」
宿題提出しなきゃだけど、こんな面白そうなことそうやすやすと逃してたまるもんか!
「アリスがそうしたいなら別にいいよ」
「マジ!?やった!」
手を叩いて喜ぶあたしをウルリーケさんが面食らったような顔で見ている。
「まだこちらの世界の説明を何もしていませんが…」
「そんなのおいおいでいいって!」
楽しければそれでよしっ!
「これからお世話になりま〜す!!」
楽しい毎日になったらいいなぁ!
ドキドキわくわく友人達にお気楽思考だとか後先考えろとかよく言われた。でもあたしはいつもこう反論していた。
いや、そんなこと全然ないって。