「…副長、生きてますか?」
「……なんとかな…」


机につっぷしていた土方は五徹のため濃いクマがついた顔をあげる。完成した書類を受け取るためにメールで呼び出された山崎はその顔を見て思わず後ずさった。


「…今回は一段と沖田隊長の妨害がすごかったみたいですね」
「ああ……」


大事な書類だって言っているのにちょっかいをかけてくるは、街を壊していらない書類を増やすは、もうすぐで完成する書類を「手元が狂いやした」と言って切られた時には怒りで意識を失いかけた。
いろいろと思い出し怒りまかせに近くにあった筆を握るとボキッという音をたてて折れた。土方から出る殺気に山崎はビクッと体を震わせる。


「山崎、この書類頼んだぞ」
「はい!この山崎退、命にかえてもこの任務遂行します!!」


ビシッと敬礼をとる山崎に安堵して書類を渡す。ああ、これで寝れる。布団を取り出そうと体を伸ばした体制で山崎がふと思い出したように放ったセリフで土方は固まった。


「そう言えば副長、彼女さんの誕生日もうすぐだとか言っていませんでしたっけ?」
「…………」
「……………副長?」
バッと五日間触っていなかった携帯を開くとそこには数件のメールと着信履歴と留守電があった。同時にディスプレイで日付を確認する。


「……っ!!」


顔を引き攣らせ土方は猛然と駆け出した。その勢いに驚いた山崎はしばらく唖然と部屋に立ち尽くしたのだった。









「…で?」


悠然と足を組み替える恋人の前で土方は正座したまま肩身を小さくする。


「誕生日前日と当日は一緒に過ごそうって言って、計画たててレストランの予約までしていたのに連絡なしにすっぽかして今更どの面さげて私の家までやって来たの?」
「…悪かっ」
「聞きたいのは謝罪の言葉じゃないんだけど」
「………」


沖田の妨害が今回特にひどかった理由に合点がつき土方は奥歯を噛み締める。
今年の誕生日はいいものにしてやる。そう約束して、前々から有休をとり仕事も切り詰めていた。普段我慢させている分、たくさん甘やかしたかった。彼女の方にもそれが伝わったのか、あれをしたいこれをしたいと計画の段階で甘えてきた。二人にともその日がくるのを楽しみにしていたのに、全ておじゃんだ。
怒らせた。寂しい思いをさせた。だから土方は何も言えなくなる。


「言い訳しないの?」
「…んなみっともねェ真似はしねェよ」
「ふーん」


ベシッと頭をはたかれた。見るとつまらなさそうな瞳がこっちをのぞいている。


「すればいいのに。『総悟に邪魔されたんだ』って」
「………」
「誕生日の日に沖田さんからメール着たの。『土方さんは仕事に終われてやす〜』って。ああ、コイツのせいか、ってなった」
「………」

頭を叩かれる。弱々しく。ぽかぽかっと。何度も。


「トシのバーカ!楽しみにしてたのにーバーカ!何沖田さんにいいようにあしらわれてんのよ!バカ!ヘタレ!マダオ!」


泣きそうなその声を聞きながら土方は黙って殴られる。やがて、拳はやんだ。唇を噛み締めぐっと泣くのを堪えているいじらしい姿に胸が軋んだ。


「…すまねぇ」
「謝らないで。…謝って楽になろうとしないで。言ってほしいのはそんな言葉じゃない」
「……ああ」


柔らかい頬を両手で包み額を合わせる。瞳に溜まっていた涙が零れ掌をつたう。


「誕生日おめでとう」








強くて優しい君へ



「ちゃーんと埋め合わせしてもらうからね!」
「もちろんだ。ドンッとこい」
「予約してたとこより倍高い店予約してやる!」
「ちょ、それはちょっと…」




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