なつき度A


「なんでしょうね、あれ」
「むー?」
ノボリさんと一緒に見回りに出ようとしていると、がやがやと集まってなにかしている緑の集団。言わなくとも分かるだろうけど鉄道員さんたちだ。
私とノボリさんは顔を見合わせる。ノボリさんがその集団に近付いて声を掛ける。よく見ると白色つまりクダリさんも混じってる。
「どうされたのですか」
「あ、ノボリ!」
「ボス!!」
「見てください、ぼくディグダとハート二つです!」
小さい機械を持ったカズマサさんが嬉しそうにノボリさんに見せている。私は少し高度を上げてノボリさんの横から覗き込む。
「簡易なつきチェッカーっていうんだってー」
「シンオウのポケッチカンパニーが他の地方向けにポケッチのアプリを別にして作ったらしいんです!」
それって最終的になにがしたいの。
「それはそれは……ではそれでなつき度を調べられるのですね」
「そう!ぼくらのポケモンはみーんなハート二つの最高だった」
「それは素晴らしい!」
興奮気味のノボリさん達は置いておいて私はしげしげと画面を見る。モンスターボールに当てると中のポケモンのデータを読み取るのか、軽いカーブのついた本体には多分ディグダらしき絵と大きなハート二つ。
「なまえ!」
「むう?」
「わたくし達もしませんか」
「む!」
嫌だ、と反対を向く。なんでそんな恥ずかしいことを。
「何故ですか!?」
なんでボス会話できとんや、ボスダカラジャン?とか聞こえてくる。
「むー!」
「恥ずかしいのですか?」
なんで分かった!?少し驚けばその隙にとはがりに私を捕まえたノボリさん。
「それはモンスターボールに入ってなくてもできるでしょうか」
「むー!む!」
「できますけど」
「なまえすっごいいやそうだよ」
あははって笑うクダリさんが無駄に腹立たしい。
「むー!」
「だめですか」
「む、むぅ」
そう言われるととても申し訳なくなってしまう……。
じっと視線を合わされて、まるで自分が悪いみたいにさえ感じてしまい抵抗をやめる。
やめた途端うれしそうなノボリさんが興奮気味にその機械を使おうとする。別にしていいなんて言ってないんですけど!
「ふむ、これをポケモンに当てるのですか」
「ソウダヨ、ボス」
「なまえノボリのこと好きなのかな」
「不安になるようなこと言わないでくださいまし!」
これでもノボリさんのこと好きなのに不安になるなんて聞くと少し不本意だ。
「むう」
不満だ声だしてと伝えればよしよしと頭を撫でてくるけど、そんなので機嫌が取れるなんて思わないでほしい。
「さっそくやってみましょうか」
ノボリさんが私になつきチェッカーを当ててくる。少し間を開けて「ぴっ」と機械音がする。
「……」
微妙な表情のノボリさん。私はそっと浮いて画面を見れば、ハートが二つ。これが最高?三ツ星みたいに三つなのかな?
「ハート二つ、でもちっさいからそこそこ懐いてるって感じだっけ」
「……なまえ!」
すがるような視線をよこすノボリさんには悪いけど、こればっかりは私にどうしようもない。
「どうしてですか、なまえ!」
なんだこの若干の修羅場感。……微かにどうすんだよーみたいな周りの視線を感じる気がするのは私の気のせいなのだろうか。
「むう」
仕方ないから私は少しだけノボリさんの頬に擦り寄るように身体を押し付ける。そしたらノボリさんは一時停止してしまい、どうしたのかと思えばここ最近一番の笑顔で私を一撫ですると、みんなの方を振り向く。
「さあ、みなさん仕事ですよ」
「カズマサ」
「なんですか、ボス」
「それ修理に出すといいですよ、壊れてるのかもしれませんから」
「ええ!」
おい待て。少し涙目のカズマサさんを残して、嬉しそうなノボリさんは私を抱えて見回りに出て行った。にやけ顔のクダリさんが私に手を振っていて腹がたった。
H25.05.28

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