食べられた


「はあ」
こたつに足を突っ込んでカタカタカタキーボードを叩く。
隣には私と反対にすやすやと眠るノボリがいる。
寝顔かわいーとか、睫毛ながーいとか考える暇はあまり無くて、羨ましいなこのやろーとか内心思いながら、レポートの続きをする。
「しらないっての」
次のプレゼンの準備もあるのに。
あの先生はちょっと頭おかしい。そうでもなきゃ、この課題の量はおかしい。
かた、かた。
静かな部屋で進まないレポートをする私。
ノボリはなんの夢を見てるやら。……ゆめくいしてやろうか。このまえストレンジャーハウスで捕まえたジュペッタだけどゆめくい覚えるのかしら。
「……ノボリ」
ついノボリの頬に手を伸ばす。仕方ないと思う、こんなに無防備に寝られると悪戯の一つや二つしたくもなる。
耳の方にぺとりと手を這わせれば、首をピクリと動かしたノボリ。起きちゃったか。
「つめたいです」
むすっといつも以上の仏頂面が視線で私を責めてくる。
「ごめんごめん、つい」
手を引っ込めようとしたらその手を掴まれた。確かに私の手は冷たいらしい、ノボリの体温があったかく感じる。
そのままぼーっとしていたら、温めるように両手で包まれる。ぬるくなっていくノボリの手。
「ダメでしょう、こんなに冷たくして」
「だって終わんないんだもん」
「まったく、期限はちゃんと把握しておきなさいと言っているでしょう」
そう言われてなんだか叱られている気分になって、増してやる気が無くなってきた。
「う、ぅ……はい」
「よろしい。では今日はお休みしましょうか」
「えっ?」
ぎゅっと所謂恋人繋ぎになる。ノボリを見れば楽しそうに繋がれたその手を見ている。
何度もにぎにぎと握りなおしたり、一本一本を執拗に撫でてくる。
「今日休んだら死亡フラグ……」
「明日ならわたくしが献身的に尽くして差し上げますよ」
やる気でるでしょう?私の手がノボリの口の方に運ばれる。笑わないはずのノボリの目はとても楽しそう。
……ムカつくけど言い返せない。
「ねえ、なまえさま」
私の指を食んだノボリが笑う。指に熱くて柔らかい感触。ねっとりとした感覚に私は顔を歪めれば、ノボリは満足そうに優しく歯を立てた。
「おやすみ、しましょうか」
寝かす気なんてないくせに。
13.01.21

戻る


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -