メレメレ 6日目


「こちらをどうぞ」
例によってイリマさんの家に来た私は、紙の束と本を渡された。
「……ありがとうございます」
受け取って中身を確認すると、赤ペン先生が施された昨日の答案用紙だった。
「結構な問題があったのに、早くないですか?」
「そうでしょうか? 面白かったですよ、なまえの回答」
うきうきという顔をしているので嘘ってわけでもないだろうけど、負担になってるだろう、少し罪悪感……。
「記述問題なんてなかったですよね」
「まるで違う歴史でも学んできたようで思ってもみない回答がありました」
ぎくっとなってしまいそうな発言を聞きながらヘラヘラ笑う。
「すみません、やっぱり歴史関連がガバガバでしたよね」
と紙をめくっていくと、はがねタイプのタイプ相性でミスってるところに気づく。あ、ゴースト、あくに対して等倍……。
「……フェアリータイプの余波だ」
はがねタイプだったら大概こうかいまひとつじゃんだったのが、フェアリータイプが追加されたおかげで変わっちゃったんだよね。スクールで少しだけしたけど、フェアリーがこうかばつぐんなタイプの印象しか覚えてなかった。
「この辺もタイプ分類における歴史ですから、なまえの苦手分野かもしれませんね」
「進研ゼミみたいなことを言う」
「シンケンゼミ?ゼミナールのことですか?」
「私の地元の慣用句です」
嘘ではない、でもない。
「聞いたことのない単語ですね、なまえはどこの出身でしたか」
「カントーでいいのかな」
クチナシさんに教えてくれた話を思い出しながら、そんなことを言ってみる。
「カントー地方ですか。カントー地方はここ、アローラとリージョンフォーム違いのポケモンが多いんですよ」
一応流してくれたので一安心。頷きながら、紙を捲りながら間違えたところを見直す。細かいところは知っててもミスってたりして、学校のテストっぽい。
「ニャースとかですか」
「もうご覧になりましたか!」
「はい、可愛かったです。何回も引っ掻かれましたけど」
クチナシさんのところにいた灰色のニャースたちを思い出す。
「他にもそうですね、コラッタ、ラッタ、ライチュウ、サンド、サンドパン、ロコン、キュウコン、ディグダ……」
早い早い多い!ずらっとイリマさんが並べたポケモンたちは、確かに全てカントーつまり、私でいう初代からいるポケモンたちだ。まさかポケモン言えるかなかな!?ってくらい全部教えてくれると思わず、少し引いてしまう。
「たくさんいるんですね」
「はい。よかったらそこに図鑑を置いていますから見ても良いですよ」
「ほんとですか、やった」
答案用紙を全て見終えて、自分がなかなかの劣等生であると自覚して最後に重ねて受け取っていた本を見る。
「アローラの歴史……?」
そのまんまのタイトル、中でもここ、アローラに絞った内容なんだろう。
「よかったら読んでみてください。ここで暮らしていく上でも役に立つこともあるでしょう」
「ありがとうございます」
「他の教材もボクのものでよければいつでも貸しますから言ってくださいね」
彼の視線を追うように私も並んだ棚に目を向けた。
ラベリングされたVHSっぽいものやCDかDVDが入ってそうなケース、太い専門書っぽい本や学術雑誌ぽい見た目のもの、さまざまな種類の資料がきっちりと収まっている。
ラベルの文字はイリマさんのものだろう、さっき答案用紙で見た。
案外荒い書き文字に好感度が上がる。
最後の答案用紙の端っこに書かれた、「これから一緒に頑張りましょう」の文字に口元が緩むのを感じた。

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