道を外れる


新作恒例のメタネタ注意。ネタバレ有ります。プレイ後に読んでね。
苦手な人はブラウザバック。






「おやー。こんなところになまえさんが落ちていますね。どうされましたか?」
大の字に寝転がっている私を、見下ろしている人に驚いた。商人みたいな人は荷を運ぶのに団体になって、移動しているものだと思っていたけど。単体でこんなところを歩くなんて、またサボりかな。
「道端で寝るのが趣味なんです」
にこにことしている顔がなんとなく鬱陶しくて、さっさとどこかへ行ってくれないかと適当なことを言い返す。
「それはそれは、もしかしてあなたのいた時代というのはそれが一般的なんですか」
私が通った穴はあなたのせいで開いたわけだが、そのへんどう考えての発言なんでしょうかね。
笑顔の変わらないウォロさんは私の顔の横に立ったまま、動かない。この人、でかいから圧迫感がある。
「ええまあ道なんてあってないようなものです」
嘘だ。いつだって道の上くらいしか歩けないのが決まりだ。ああでも最近は自由度も高かったような気も。
「でもまっすぐな道だけは気をつけた方がいいですね、ライドポケモンに乗った人間が爆走しているので。機会があったら、ですけど」
まあ大して効くはずもない嫌味を付け加える。
「なまえさんのいた場所にもライドポケモンが」
「そーですよ。牧場前の謎のスペースに大量の人がぐるぐるしてることもあります」
「ライドポケモンに乗ったままでしょうか」
「そりゃもちろん」
「それはまた面妖ですね」
こちらの発言を吟味するようなウォロさんが、興味深げに笑っていた。
「時々外して、スペースから出ちゃうんですよ。うっかりミスが多くて困ります」
やれやれと戯けて見せた私に、核心めいた、いや鬼の首を取ったような声で彼は言った。
「今回もそのような感じでしょうか」
放り出していた手足がびきびきと痛む。彼の目が私のことを冷たく見下ろしている。
まあ、その通りだった。
ウォーグルさんに呼び出したかったところをオオニューラさんを呼んでしまい、焦った末、解散である。
そのまま放り出された私の身体は無事、動体着陸していた。
甲高い音が響いて、私の死んだ音がした気がした。
ああ、さらばがんばりのイワ。もうそんなにいらないけど。
「……また会えるような気がしてました」
これも嘘だった。
「実はいつか夢で会える気がしてたんですけどね、残念ながら現実で普通に会えましたね」
「普通にというには、この状況は異常だと思いますが。それともあなたにとってはこれで通常ですか」
「こんな感じで落ちるのは何度か経験あります」
返事がない。ただのしかばねみたいな私を見ているだけだ。
「ワタクシもまた会う気がしていました。あなたの戦いっぷりは陰湿でしたから、怒りを買ったら最後でしょう」
それは鍛えて挑み直し続けたことを言っているのか、私の戦法のことを言っているのか。正直、ヘドロばくだん系が一番陰湿だと思うんですけど。
「シャドーダイブ追加ゲージ男のくせに」
口をついて出た悪態が空気の抜けたボールみたいだ。勢いがない。
私死んだら、ベースキャンプに行かなきゃなので。そろそろお別れですね。
「何度も何度も戦いに付き合ってくれたので、探してあげますね」
具体的に続編で探し物を探しにいってしまった私の話が残るように。

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