灯台下暗し


時系列のことを考えて、アニメで使用してない技を使います。捏造注意



「ペロリーム、メロメロです!」
「え」
ショータくんのペロリームはオス。私のブラッキーはメス。
「ブラッキー!!」
「エナジーボール!」
「避けてえ!」
私の声が届いてないのか、ブラッキーはじっとペロリームを見つめて、技を食らってしまう。
「や、ちょっとブラッキーせめて避けて、ああもう、バトンタッチバトンタッチ!」
しゅんとした顔をして、しなきゃダメ?みたいな表情を浮かべる彼女に胸が苦しくなる。そうだよね、好きな人から離れたくないよね。わかるけど、ダメ!
「ペロリーム、そのままドレインパンチです」
「避けて避けて避けて!」
リズムを崩されたせいで焦る私の指示には耳も貸さず、技を健気にも食らった彼女が目を回す。
「……やっちゃいましたね」
こうかはばつぐん。次のポケモンと入れ替える。
そのあとも調子を崩し続けた私は2対2のバトルを負けで終えてしまった。
「なまえらしくないバトル、で」
したね、と溢したショータくんがこっちを見て微妙な顔をする。
「ブラッキー、嫁にはあげないからねええ」
すりすりと彼女に頬擦りをしてぎゅうぎゅうと抱き締める私のせいだった。出来れば引かないで欲しい。
「なまえ……大丈夫ですか」
「大丈夫……でも、」
ペロリームに2タテされたため、ペロリームも心配そうにのぞき込んでいる。ペロリームは悪くないが憎き私のブラッキーの恋のお相手かと思うと、素直に返事ができない。うそごめんね、そんな申し訳ないみたいな顔しなくていいよ。
「うう、ごめんねえ」
「なまえはブラッキーが大好きなんですね」
「うん!」
と素直にも園児のような返事をしてしまった私だが、ブラッキーは腕の中でもがいてからあっさり腕の中から抜け出してしまう。
「……ブラッキーは……大丈夫、きっとなまえのこと好きですよ」
「う、うん」
ショータくんの慰めが、逆につらい。
ブラッキーはバトル後の疲れもあまり見せずに、ショータくんと私のポケモンたちに混ざって遊び始めた。
「なまえはいつも冷静に指示をしているのに、珍しいこともあるんですね」
「……うん、なんか娘が嫁に行くみたいな感じで、つらい。初めてメロメロ使われた気がする」
「そうなんですか?結構メジャーな技だと思うんですが」
「基本的にアタッカーが多いから補助技使われる前に倒す戦法なんです……」
「なるほど、メロメロを使う余裕を与えないんですね。確かにそれなら」
ふむふむと手帳を取り出すショータくんに、少し笑いが漏れる。
「ショータくんは指示出す側だけど、そういうのはないの?」
「バトルなのであまり考えたことはないですね。メロメロはバトルが終われば効果が無くなりますし」
手帳を書き終えて頷いたショータくんが、その場に座った。私も隣に失礼して、ポケモンたちの方を眺める。
「今度ショータくんと戦うときは、赤い糸持たせる」
「確かにそれはいい手ですね。気を付けます」
「あーでも両想い見たらもっとつらいかも」
私の嘆きに噴き出したショータくんに恨みを込めた視線を送る。
「なまえは本当にポケモンのことが好きなんですね」
「うちの子は嫁に出さん」
「でも、ブラッキーと僕のペロリーム仲良さそうですね」
「本当に……?」
どうしよう。本当に好きになったら、多分交換とかになるかもなんだよね。
大体、トレーナー同士が一緒に旅するか交換するってのがそういうときの対処なんだけど。
恐る恐る彼女の方を見る。
「……仲は良さそうですけど、メロメロって感じじゃないですね」
「そうだねえ」
友達って感じだし、私の方をちらっとみて「ふん」と鼻を鳴らしたのを見る限り、若干当てつけも入っているように見える。ほっぺすりすり(ノーマル)そんなに嫌だったかな。
「くっ、いたずらごころだったかな……あの子」
ありえないことをぼやきながら、ちらりとショータくんの顔を横目で見た。
「目が違いますね、文字通り」
「確かに……」
神妙な顔をしているが、失礼ながらショータくんがそんな恋愛とかに興味を持っていると思わなかったせいでほんの少し胸がずきっときた。
というか、ポケモンのそれが分かるなら私の視線にだって気づいてほしいと思ってしまうのは贅沢だろうか。メロメロの五倍は熱い視線の自信があるのに。
「ぶらっ」
私たちの視線を受けたブラッキーとペロリームは、ぴょんぴょんと二人してこちらに来る。
「どしたの?」
と伸ばした私の手をするりと抜けたブラッキーと入れ替わりに、ペロリームが近づいてくる。
「え、やだ可愛い」
うちの子たちとはまた違うふわっふわの感触がほっぺをくすぐる。おもったよりも軽いペロリームが私の身体に乗り上げて、すりすりと身体を摺り寄せてきた。
「わあ、すご、や、くすぐった、あは」
「なにやってるんですか!ペロリーム!」
ぺろりと舐められて、あ、これ最初に出会った時もされたなと思いながら、くすくすと笑わずにはいられない。
「うひ、ペロリーム、ん、、」
ひっくり返った私にショータくんが後ろであたふたとしているし、ペロリームはまだくすぐったいし、とされるがままになっていると、ショータくんがさすがにペロリームを引きはがそうとしてくれる。
「ペロリーム!いい加減に……」
ブラッキーがてちっと私の頭を叩いた。あ、ちょっと嫉妬。かわいい。
「あ、すみません」
素直に謝る。デレデレしすぎました。
うちの子はこう、分かりやすい甘え方をしないせいで、つい楽しんでいたけれどさすがにこれはアウトらしい。
「ごめんねえ」
へらへらとブラッキーを抱き締めていると、うちの子たちからの「またか」という呆れきった視線を貰う。ショータくんも呆れて……って思って、見上げた彼の目がなんとなく見たことがあった。
「ショータくんもやっぱ嫌なんじゃん」
「えっ?」
ちょっと嫌そうな顔してる。メロメロブラッキーを見ている私みたいだ。
「ペロリーム、取ったりしないよ」
それが私に向いていればなあ、と勝手なことを考えてしまう私にブラッキーはしっぽで一発はたくを繰り出した。

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