日差しの想


ガラルに夏があるのか、ほかの地方にいるのか
それの解釈はお任せします。





じっとりとあつい。手の甲で汗をぬぐう。
貰った冷えたきのみを片腕に抱えて、道に沿うように歩く。
生えているひまわりは背が高い。この日差しのせいだな、きっと。
キマワリが時折混じっている。あ、この子大きいな。
そんな風にきょろきょろしながら、道なりに進む。どこまで、先に行ってしまったのだろうか。
置いていくなんてひどい。恨み言を心の中で唱えながら、乱暴な足取りで探し回る。このままではせっかく冷えたきのみがぬるくなってしまう。仕方なくこの暑い中スピードをあげているのだ、これは後で何かしらのご褒美でももらわなければ、やってられないね。
ひときわ大きな影がひまわりに隠れてたたずんでいる。彼の頭には私が貸した、水色のリボンがなびく麦わら帽子。どのキマワリより、ひまわりより、大きな花を広げている。
水色のリボンは彼の相棒を思い出させる。まあそのつもりで買ったんだけど。
私の被っているキャップを貸してあげてもよかったが、彼にはこっちより似合っている気がする。
「ビートくん!」
私の声で、ひまわりに落ちていた視線が私の方へ移動する。
「見て、これ。食べてって」
冷やしきのみを見せれば、噤んでいた口元が緩んだ。その横をつーっと汗がゆっくりと垂れていく。がさがさとひまわりをよけてビートくんが近づいてくる。
「一つ、いただきますよ」
「はあい」
ビートくんはピンクの色をした如何にも甘い色のきのみを選んで、口に運ぶ。私も倣うように同じ色のきのみを手に取って、かじりつく。じわりと果汁が口に広がってぷつっと繊維が切れていく。
「つめたい、甘い、さいっこう!」
「まあまあですね」
素直じゃないなあ。
「おいしいね」
「……ええ」
まあこれでいいだろう、とふふんと笑ってもう一つ。
風がひまわりの間を通って私たちに吹く。帽子が飛んでいかないように、彼の手が帽子を押さえる。青空にリボンが溶けてしまいそう。対して私の髪は私の顔に直撃して、彼は吹き出すように笑った。
私の恨みがましい視線に気づいたのか、彼の手が私の顔に迫ってくる。これはでこぴんかアイアンクロウでは?
顔の前でそっと横に逸れた彼の手が私の横髪を手櫛で直して、耳に掛ける。
「ばっ、か!」
「直して差し上げたのに随分な言い草ですね」
「う、うるせー」
目を逸らしてごまかすように、もう一つとまた片手で手に取った。
腕いっぱいのきのみのバランスが崩れて、ひとつ転がり落ちる。
「あらら」
「横着するからですよ、まったく」
かがんで取ろうとしたけど、ほかのきのみも腕になっているせいで微妙に取りにくい。
それに気づいてくれたのか、ビートくんが同じくかがみこむ。
帽子のつばの影に私の視界が覆われる。
彼の手が転がったきのみを掴んだ。
反射的にその手を掴む。
「なんですか」
「……なんでもない」
突発的な行動に意味を聞かれてもわからない。なんで掴んだんだろう。
私の謎の行動に、眉を顰めた彼は立ち上がってきのみを少し見る。
土がついてたのかな。ごしごしと服のすそに表面をすりつける。
そのまま、思ってたよりも大口でそのきのみにかじりついた。
眉間のしわが深くなる。ああ、それすっぱいきのみだ。

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