にせもの、ほんもの2


遠目から、彼を観察する。
スタジアムの真ん中でポケモンたちに指示を出すビートという少年を、私はスタジアムの観客席で見ていた。
ポプラさんの言いつけに反発しながらも、しっかりこなす彼。腕は確かだ。ここのジムトレーナー以上の実力だと思う。
バチリと視線が交差して、その紫の目が私の思考をこそぎ取った。すぐ興味なさげに逸らされたことへの苛立ちよりも、それを惜しく思った。
ポケモンたちへの指示や戦略は真っ当すぎるほど真っ当で。トレーナーの端くれとしては純粋にすごいと思った。
「問題だよ、そこで見てるあの子の名前はなんだったかい?」
ポプラさんのクイズ。
……ごくり。
少し考えた素振りをした彼は「コトさん?」と声に出した。
「おい!」
「ハズレ」
つい声が出た私を無視してポプラさんが笑いながら判定する。
「ポットデス!アロマミストを全力噴射!マホイップ!いっけえ!!!」
ぐぐーんと上がった特防は彼の操るブリムオンには痛いはずだ。当たったはずのサイコキネシスが全く効かないのは当たり前だ。
「なっ!」
「マホイップ、言っておいで」
ポプラさんの声に応えるように技が放たれて、ブリムオンが倒れる。
「ビート、あの子の名前は?」
「なまえでしょう、エリートのぼくが昨日のことを忘れるわけないでしょう」
そうですよね、私はともかくジムトレーナーの名前間違えるわけないっていうかわざとか!
私はフィールドの方へと出て行きながら、ポットデスを撫でる。
「良い仕事だったね」
「きゅーん」
「バトルの妨害をしておいて悪びれるそぶりもないなんてどういう神経ですか」
恨みがましい表情にへらりと笑い返してみる。
「ここのジムリーダーならステータスの変化に動揺なんてしてられないと思いますよ、ビートくん」
敢えてちょうはつを決めれば、彼の口角がひくりと引きつった。
「そのくらいにしな」
「もちろん、これ以上邪魔しない。見てるだけ」
窘めるようなポプラさんの視線に、気をつけをして笑う。
「ほら、もう一回だよ」
ポプラさんの指導は甘くない。出来なかったのならもう一度。
ステータス変化はポケモンの不調にも繋がる。いつもの調子に戻れなくて力をうまく扱えなくなる子だって少なくない。
彼はそれを知っているのだろうか。私はまた彼らのバトルに目を向けた。

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