ミルクレープの呪い


「それ、なんですか」
ビートくんは机と布団が合体したもこもこしたフォルムのそれに、若干引いたような顔で突っ立っている。
「おこたです」
「……はあ」
「まあまあ、座って!」
おずおずと足を入れた彼が隣に座る。
「暖かいですね」
彼との距離は拳二つ分くらい。
「うん、これシロデスナがジョウトで進化するとコタツーンになるの」
「……嘘ですよね」
「うん」
つまらない嘘を言ったせいで、彼が笑顔を引攣らせる。
「うん、でもシロデスナよりこわいところがあって、毎年何人もの人がこれで死んだりするよ」
「そんな危険物、家に置かないでください!!」
「この魔力に抗える人間なんていない。チャンピオンで無理だよ。さて、君はどうかな」
にやりと分かりやすくちょうはつして見せれば、ビートくんは立ち上がろうとした膝をまたこたつの中に戻した。ちょろい。



「あ、やっと起きた?」
「ん、う……うん?」
もぞもぞと動き始めた隣の彼に笑い声が出てしまう。
小一時間ほど眠っていた彼の声は若干かすれていて、どうぞと自分用に用意していた麦茶を渡す。
「……どうも」
ごくごくと美味しそうに飲み干す。
「どうぞ」
次はみかんを差し出す。
しかも剥き掛けのものだ。
自然と受け取った彼がそれを口に入れる。少し食べたが甘くて酸っぱくていい感じだった。
「おいしいですね」
ぽつりと返事が返ってくる。それから少し間があいて、はっとしたように私の方を見てそんなことを言う。
「今、何時ですか」
「さぁね」
きょろきょろと周りを見渡すが、残念ながらこの部屋は時計なしだ。この前電池が切れたのを変えるために降ろしたから。
「多分そんなに経ってないよ、だからもうちょっと」
「……貴女が自分に心底甘いのは知っていましたがここまでとは」
「ふふふ、私以上に私を甘やかせる人はこの世に一人しかいないのさ」
じっと視線を送る。
「まさか、ぼくとか言いませんよね」
「君以外に誰に甘やかしてもらうのよ」
拳2個分をずずいっと詰めて、笑いかける。
「……ぼくの負けかもしれませんね」

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