ぴかぴかの季節


「イリマくんって暑さ感じてるの……?」
メレメレは今日も快晴。あっつあつの気温に皆いつもより軽装で、ハウオリを歩いていた。
だというのに、なぜだ。
「暑いですよ?」
ベスト?嘘だろ。
「こいつ、本気か……」
にこっと笑ったイリマくんに本気でドン引いた。
「さあ、ドーブル。今日も仕事しますよ」
本人よりドーブルの方が暑さで参ってるようで、少し動きが緩慢だ。
「ドーブルも大変だねえ」
「ぶるっ!」
「大丈夫って?うーん」
返事はいいが、心配してしまうレベルの動きの鈍さに少し撫でてあげる。ああ、そういえばと私はモンスターボールを投げる。
「こん!」
白い毛並みのロコンはドーブルのことを気に入ってるため、出てきてすぐドーブルにすり寄った。
ドーブルもひんやりとしたロコンの体毛に触れ、少し楽になったのか顔をほころばせた。
「ロコン、お仕事てだすけ、する?」
「こーん」
元気のいい返事でゆっくりと隣を歩く。私が次は暑くなってしまう。ドーブル羨ましい。
ロコンと身を寄せ合うようにひっついて歩いている。仲良しだなぁ。とてとてとイリマくんの持っていたブラシを持って、横に並ぶ。イリマくんはペンキ缶を一つ手に携えている。
いっそ、ロコンとドーブルの両方を私が抱えれば私も涼しいのだけど、残念ながら二人を抱えるのは難しい。
「なまえ、聞いていますか?」
「え?」
イリマくんに呼ばれて振り向けば、彼はこちらを訝しそうに見ていた。
「な、なにかな?」
じっと私を見たと思えば、ゆっくりと近づいてきた。
さすがちまたで歩くシーブリーズとか言われてるだけあるな、涼しそう。いや、言われてないけど。今適当に言っちゃった。でもなんでそんな涼しげなんだろう。普通に不思議。キャプテンはみんなこんな感じなのかな、マオちゃんとか全然そんな風じゃなかったけど……。
そんなことを考えていると、彼の手が私の額に触れた。
「ななな!何!?えっ?」
「大丈夫ですか?熱中症でしょうか」
いやいや、まさかアローラ民がそんな……!
「ていうか、汗つく!」
私汗っかきなのに!張り付いた前髪を拭うように私の額に触れた彼の手には、もうそれは酷い量の私の汗がついてしまったんじゃないだろうか。
「汚いよ!手!手洗おう!汗!」
もう何言ってるのかもわからない私はこんらん状態だ。
「大丈夫ですよ、ああ、でもペンキついちゃいましたか?」
「そ、そうじゃなくて!」
申し訳なさそうにするイリマくんだけど、私はペンキくらいなんでもいいよ!手綺麗だったし!
水道を探して辺りを見回そうとした私の足がぐるりともつれる。
それをイリマくんが気づかないはずもなく、彼の腕が私の体を支えた。
人一人を支えても、しっかりとした腕が自分とは違うことを嫌という程教えられる。
「……あ」
「大丈夫ですか?」
密着した体が、イリマくんも暑いのだと伝えてくる。
「あ、りがと」
「いえ、もう少しこのままでもいいですよ」
「え?」
「ドーブルたちのことが羨ましいのかと思ったのですが、違いましたか?」
首を傾げた彼の見当違いの天然ぶりに私は、私は何に照れていたのかと少しだけ、溜息を吐く。ロコンを見れば、なぜか戦闘態勢に入っている。まさか……、この子技使う気じゃないよね……。
「こん!」
こごえるかぜならぬこごえるそよ風がふわりと吹いた。ひんやりとした風が私の頭を冷やす。
「ありがと、頭冷えたし、涼しかった」
ふぶきとかじゃなくて本当に良かった。風邪ひくかと思った。
「こーん!」
「はいはい、クラボのみのお菓子を用意させていただきます」と言いながら、イリマくんの腕に支えられてた体をしっかり自分の足で支えてロコンの元に歩く。
「てだすけ、終わったらね」
帰り際ならマラサダでもいいかもしれないと思いながら、ロコンを撫でる。
「あ、あの」
「なに?」
振り向けば、ドーブルがイリマくんを見上げていた。見上げられているイリマくんは私と同じこごえるそよ風を浴びたとは思えないくらいに頬を赤くしている。風邪なのかな、今の間に?
「実はからいきのみのお菓子を頂いたのですが、僕のポケモンたちだけでは食べきれないのです。いかがでしょうか」
私も大概、天然なのかもしれないとイリマくんの顔を見る。彼の頬の赤さはもしかすると、暑さのせいではないのかもしれない。

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