タイプ相性論のすヽめ


「イリマはさあ、ノーマルタイプって感じしないよね」
「急になんですか?」
「友達とポケモンだったらなにタイプっぽいか話してたの」
「そういうことですか。では、なにタイプに見えますか?」
ふむと椅子を回転させ、こちらを向いたイリマはベッドに座って持ち込んだ雑誌を読む私に笑っている。
「……なんだろ、くさかな、みずじゃない、じめん、いわ、……フェアリー?ピンクだし」
ピンと思いついて、少しだけ意地悪く笑えば肩を竦められる。
「適当ですね、なまえはなんて言われたんですか?」
「私?ノーマル」
少し、なんとなく、気恥ずかしい。イリマの好きなタイプと言われて、少し、ほんの少し、嘘だけど、凄く嬉しかった。そんな私はおみとおしな、イリマも嬉しそうにいつも浮かべてる笑みを一層深くしている。
「なまえがノーマルタイプなら、僕は効果ばつぐんのかくとうタイプなんてどうですか?」
「ふっふふっ、イリマはかくとうタイプじゃないよー、力はそれなりにあるけど違うと思うな」
「そうですか?自分ではいいと思ったんですけど」
「それに効果ばつぐんはやだな。私からはふつうじゃん相性」
「……そうですね、互いに効果ばつぐんとなるとドラゴンとかになりますけど僕らはそれはないですね」
「……でも、ノーマルタイプっぽいのは嬉しいよ」
イリマを見ながら、自然と言葉が出てきた。なんだか、今の私は素直ならしい。
イリマの視線が私にむかっている。青い瞳が私をまっすぐに見ている。ぎしっと真っ白のシーツのベッドが軋む。
イリマは笑顔を絶やさずに私を見ている。ぴくりとイリマの手が動いたことに気づく。私は馬鹿みたいにイリマがゆっくり立ち上がるのを見て、眺めているだけだった。
「イリマ?」
じんわりと自分の呼んだ名前が脳味噌を溶かしているんじゃないか、そんな風に思うくらい、愛おしい響きが私の中に染みてくる。
青いのに、涼しげなのになんだか熱っぽくて、かなしばりみたいに動けない。イリマの目は青いのにまるでくろいまなざしみたい。
「なまえ」
私の隣にイリマが座る。私の名前を呼ばれる。耳障りのいい心地好い声がすとんと奥の方に落ちてくる。呼ばれたままに、私は彼の方をじっと見ていた。目が合えば、ゆるりと私を溶かす青い瞳はゆっくりと細められ隠れてしまう。
もったいない、なんて思って、声が「あっ」と漏れてしまう。
「どうしました?」
「う、ううん」
私の声に少し驚いたように目を開いているイリマ。なんだかそうしてると少し子供っぽくて可愛いと思う。ポケモンバトルのとき楽しそうにする時とおんなじ、子供みたいな表情。わたし、
「すきだなぁ」
わたしの声も子供みたいに、ぽろりとこぼれた。
はっとして口を押さえれば、また細められた瞳はまた熱を帯び始める。困ったように下がった眉が可愛くて、でもわたしを見ている彼の口は可愛くない。まるでこれからなにがあるのか分かってるみたいな、そんな意地悪そうな形をしている。でも、ゆっくりと近づいてくれば、私には選択肢なんて残ってない。
視界の端に真っ赤な毛糸玉。思い当たるのは、ひとつのどうぐ。それから、わざ。
「やっぱり、イリマはノーマルタイプかも」
もう数センチに迫ったイリマの顔を見て、キス待ち顔はあどけなくてやはり可愛い感じだな、なんて思いながら呟いた。
空気を壊す私の呟きを咎めるみたいに私を見たイリマが「どうして?」と聞いてくる。
今日はなんとなく質問が多いなあ。
「だって、メロメロ使えるんだもん」
私から、唇を合わせれば、また隠れていた青い海のような瞳が溢れてしまいそうになって、また隠れる。ふふって声が耳の奥に届いて、私も目を閉じた。
「メロメロは他のタイプでも使えますよ」
「知ってるし」

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