09


あれから私は夜寝てない、いやいつの間にか寝てたりするけど、ノボリさんは全く来た気配はない。
「なまえちゃん大丈夫ー?」
とか言われたり、色々あったが全く大丈夫ではない。ノボリさんに会いたい。パソコンの中じゃない、触れるノボリさんに会いたいなあ。
というかとにかく眠い、ひたすら眠い。



「なまえさま……」
あの日。あの日からわたくしはなまえさまの世界に行けなくなりました。
なまえさまが慰めて下さったのです、わたくしは努力していると。仕事を疎かにはできません。
わたくしはなんども時間を作り寝ても、隈が消えていくだけでなまえさまには会えません。
「ノボリー、スーパーマルチー」
「分かりました」
ああ、どうすればいいのでしょう。

「ノボリ!!ボーとし過ぎ!!」
クダリに叱られました。
それもそのはずです、わたくしはマルチバトルの途中で相手のポケモンの技を食らってしまったのです。利き腕ではないですが腕に怪我をしてしまいました。お客様に謝らせてしまいました。
「ちょっと休んでて!!」
クダリに仮眠室に押し込まれたわたくしは何をするわけでもなく、ベッドで寝ます。ああ、なまえさまの世界は今季節はいつでしたでしょうか。
ああ、これだからわたくしは……。クダリや部下、お客様にまで迷惑をかけて。
ダメですね、休んでいてもどうしようもありません。なまえさまにも会えませんし。
仮眠室を出て、ダブルトレインに乗っているクダリに会おうとするが、到着時間になっても執務室に帰ってきません。
仕方なく外に出れば、クダリが先ほどのお客様と話をしておりました。
「さっきはすみません!ノボリさん、大丈夫でしょうか」
「うん、大丈夫だと思うよ!ありがと!!」
わたくしはなにをしているのでしょうか。これではなまえさまに会わす顔もございません。わたくしは、わたくしはなまえさまの言葉さえ嘘にしてしまってるじゃないですか、なにがなまえさまに会いたい、でしょうか。
「あ、じゃあ僕行きますね、ノボリさんにお大事にって伝えてください」
「じゃあねー」
マルチでタッグを組んでいらっしゃったお相手に呼ばれたお客様と別れたクダリが私に気づいて近付いてきます。
あ、ああ、どうすれば、どうすればいいのでしょうか。
「ノボリー、大丈夫ー?」
「え、ええ」
「僕ね、頑張ったよ!!ダブルも勝てたし、書類も自分の分もノボリの分もした!!すごいでしょ!!」
……。クダリは本当に……それに比べてわたくしは……。なんと情けないのでしょう、仕事さえ出来ず……。
あ、嗚呼、なまえさま、なまえさま、どうか抱き締めてください、わたくしをあのときのように、慰めて、手を握ってください。
なまえさま、なまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさまなまえさま

どんっ!

後ろから何かに押され、いえ、抱きつかれたようです。ああ、まるでなまえさまみたいです。わたくしはどこまでなまえさまに会いたいのでしょうか。
クダリは驚いたような顔をして、わたくしの後ろを見ています。わたくしもずっとこのままというのもどうかと思い反対を向きました。
「来ちゃった」
なまえさまがわたくしを見上げておりました。
「……なまえさま?」
「うん」
その言葉を聞く前にわたくしはなまえさまを抱き締めました。
どうすればいいのでしょうか、わたくしはもうこの方を放せそうもありません。
「あ、ノボリさん隈消えてるー」
いつも通り関係のないことを言う方です。

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