odette e odile


「お待ちなさいなまえ!」
久々の追いかけっこは私の圧勝だ。ムウマの体に慣れまくっている私は空中に浮いてノボリさんの手の届かないところに行くなんて、お手の物なんだから。
「どうしたんですか」
私を見上げるノボリさんを見下ろす。ノボリさんが私の反応に首を傾げるのも無理はないだろう。
「今日は機嫌もよろしかったではないですか」
「むう」
そうだよ、そのとおりだよ。でも今のノボリさんには近づけない。
「……なまえ」
「むう?」
捕まえようとはしていなさそうなノボリさん。少し警戒しつつ高度を下げる。
「どうされたんですか?」
私がムウマの体の使い方に慣れたようにノボリさんは私の扱いに慣れてきてる。多分それってとっても嬉しいこと。
「むう、むーむむう」
ノボリさんは私の必死の訴えに首を再び傾げてる。
伝わってない、伝わってない。それが悲しくって、そっと体を反対に向けて逃げる。別に、別に、いい。
もういい。



ノボリさんのポケット。黒い石。私は本能的に何か分かってしまっていた。
あれは、多分やみのいし。
なんかすごく強い力を感じる。バトル前のシャンデラさんみたいな、そういう力。
ノボリさんの手持ちに、あれを使って進化するポケモンはいない。クダリさんも、ほかのてつどういんさんだって私は知らない。聞いたことない。
つまり、あれはきっと私の。
ポケモンは進化する。
そんなの私は知ってる。知らないわけない。
ムウマはね、ムウマージに進化する。
でもね、ノボリさん。私はもう自分の姿が変わるのに耐えられないよ。
こわいよ。
たとえわたしが、ノボリさんのポケモンでも耐えられない。

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