フタゴノシンクロニシティ


ぼく、クダリ。サブウェイマスターしてる。
あ、知ってる?そっかあ、ありがと!
ぼくは双子。
最近お兄ちゃんのノボリに彼女が出来たらしい。
なんでもシングルトレインの常連さんらしいけど、ぼくはダブル専門だからシングルのお客さんのこと全然知らない、管轄違い。
でも、ノボリの好きって気持ち、ぼくすごい感じてる。
双子っていうのはなんかよく分かんないけど、シンクロ?みたいなのがあるらしくて、例えばノボリがスクール時代、隣のクラスの女の子にほの甘い恋心を抱いてたこととか、ぼくには筒抜け。多分ぼくの方もノボリには筒抜け。でもぼくはノボリと違って結構ポーカーフェイス、ノボリみたいに指摘されたって顔に出さない。
それからノボリのお気に入りのヒトモシを勝手に連れ出したら、すぐに飛んできてお説教されたし、ノボリがぼくのお気に入りのおもちゃ間違って壊したら、ノボリの後ろめたい気持ちぼくに伝わってきた。
逆にぼくが怪我したら、ノボリはいつの間にかぼくの手当てしてたり、ノボリがなんか言われて凹んだらぼくが慰めてあげる。
これずーっとやってきてた。
でもこのノボリの気持ちは初めて。
隣のクラスの、えっと多分サラちゃんへの気持ちとは桁違い。
「なまえさまでございます」
ノボリがぼくに「気づいているとは思いますが」という前置きの後、恋人ができたことを教えてくれた。うん、ぼくノボリがそのなまえちゃんを好きになったその瞬間から気づいてた。
だって僕もぴしゃって雷に打たれたみたいに、びっくりした。そしたら身体中が10万ボルトを浴びてるみたいビリビリして、まるで世界が色付いたみたい。
ノボリが好きになったなまえちゃんは、天使みたいに優しくて、綺麗で、可愛くて、ノボリは堪らないって気持ちが嫌ってくらい。ほんとに嫌ってくらい伝わってきて、正直うっとおしい。
でも同じくらいなまえちゃんが気になってる。略奪とかじゃないけど、ぼく、いつのまにかノボリの気持ちと一緒になってた。
「ええ、そうなのです!なまえさまは女神のように麗しくて!」
わかったってば。もうぼくおなかいっぱい。
僕も同じように感じてる。僕のもののはずの僕の気待ちをノボリが語らないで。僕のこの気持ち、ノボリは気づいてる?不安な僕を無視してノボリは小躍りしてる、やめてよ顔同じなんだから。
ノボリから延々と聞かされるのは嫌だけど、自分で動く分なら全然問題ない!
ぼくはノボリがデートの日だと思う日、ノボリより早く家を出た。ノボリ、相変わらず前日の夜眠れてないんだもん!仕方ないよね!
どうせライモンで待ち合わせるなら、ノボリのことだからギアステーションだと思うし!
実はシングルトレインに何度か言ったけどなまえちゃんには会えずじまいだった。
きょろきょろと周りを見渡す。サラリーマン、デート前のカップル。子供に、お母さん、なまえちゃんっぽい人は全然いない。
「ノボリが来る前に探さなきゃ!ぼくの顔見てきづいてくれるかもしれない!」
……全然いないんだけど。
「ぼくとしたことが間違えた?」
ノボリも隠せるようになってきたのかなって感心しながら、ぼくは諦めて帰ろうとした。
「ノボリさん?」
「なまえちゃん!」
後ろから声を掛けられて、振り向けばそこには普通の女の子。
「ちゃん?どうしたんですかいきなり」
「……君、ほんとになまえ?」
「え、えっと、そうですけど」
ロゼリアみたいに美しくて、ドレディアみたいに可愛くて、シャンデラみたいに淑やかな?
……すっごい普通。なんか百人いたら五十五人くらいはいてもおかしくないくらい普通。
「なまえさま!」
あ、ノボリ。
「クダリ!わたくしに内緒でなまえさまに会うとはどういうつもりですか!」
「クダリさんだったんですね。びっくりしちゃいました」
「申し訳ありませんなまえさま」
ノボリは顔を赤くして、なまえちゃんにでれってしてる。
……帰ろっと。

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