「お嬢さんをわたくしにください」

兄の奇行。
生まれて初めての僕への本気のお願い。
それを叶えてあげたかった僕は確かにいたけど。でも無理。
さすがに無理。

「あのね、ノボリ、ふざけてるでしょ。帰るよ」

ふざけてないことくらいわかってるけど。双子だし。
でも、素気無く却下すれば引き下がってくれないかなって一縷の希望。

「お願いいたします、お義父様」
「それやめてきもい」

つい真顔で答えてしまった。
頭を上げたノボリが僕を見てくる。ノボリ、本気。

「分かってはいましたが、やはりそうなりますよね」
さすがに自分のやってることが完全に社会から外れてたことって分かってるらしいノボリは引き下がる。……不安。そう簡単に諦めるわけない。

「……ノボリ、僕のお兄ちゃん、なまえは僕の娘、つまり、ノボリの姪、だからさ、ノボリとなまえは結婚できない。そうでしょ?」
「ええ。ですが、諦めるつもりはありませんよ」
「どおいうこと」
「なまえの16歳の誕生日までわたくしは良い叔父でいます」
「それってつまり、16歳過ぎたらどうなるの」

「男として、なまえを落としにかかりますのでお覚悟を」

「さて、なまえに会いに行きましょうか」
クダリ、行きますよ。なんて良い叔父さんの皮を被ったノボリに、後数年しか残ってない猶予を呪う。
きっとノボリは本気。
僕も本気でなまえを守るしかない。
とりあえず上司にそっとお見合いを勧めるように言ってみよう。

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