片道列車に乗らないで2


夏休みという、子供たちにとっては夢のようなこの時期に幽霊騒ぎなんて。
ノボリと相談して、とりあえずの決定として、できる限りの調査をして解決しない場合なまえに頼むことになった。
はずなんだけど。

目の前に広がる地獄絵図に無理かもとつぶやいてしまう。
そこには何人もの迷子らしき子供たちと、その対応に追われる部下たち。
そして、げっそりとした表情でなんとか自分の顔を見て泣く女の子にあわあわとぎこちない笑顔で泣き止ませようとしてる、もちろん無理そう。
「ノボリ、なにやってんの」
「く、クダリ!助けてください!!わたくしはもう!!」
涙目のノボリ。自分と同じ顔のイイ歳した男の泣き顔なんて見たくない。
「大丈夫?怖かったね」
できる限り小さくなるよう膝を折って、視線を合わす。少し伺うようにこっちを見た女の子はぴゃっと、また顔を隠してしまった。兄よりも子供受けがいいと自覚していた分、ショックだ。
「ふ、増えたあああ!!」
あ、そっか。ノボリと違って顔で怖がられたわけじゃないだけまあいいかと思うけど隣で泣く女の子は困っちゃう。
「お兄さん、忍者だから分身できちゃうんだよー」
「……ニンジャ?」
「うん」
「すごーい!」
さっきと打って変わってキラキラとした目で見上げてくる女の子にほっと胸を撫で下ろす。「わたくしはこれで……」なんて言って、逃げるノボリに非難の目を向けつつ、女の子に視線を戻す。
「誰かと一緒に来たの?」
「お母さん!」
「君迷子なの?」
「違うもん!」
「あ」
女の子に影がかかり、僕はその影を辿るように顔を上げれば
「迷子センターってここであってる?」
小さな女の子の手を繋ぐなまえが、そこにいた。


僕と話をしていた女の子は、なまえと手を繋いでいた女の子と対迷子用遊具で遊んでいる。
それを眺めながら、僕となまえはコーヒーを飲んでいた。(これは職員用のモノだからなまえが飲むのは少しおかしい。)
「へえ、幽霊列車ね」
「うん、どうにかできるかな」
「……多分。頑張れば今すぐにでも。でも今日はせめて、夜まで待ってくれるかしら。貴方がその電車を見た時間に間に合うように」
「……」
「悪いようにはしないから」
お願い。
そう言う顔は少しだけ何か悲しいものを背負っているようにも、いつも通りにも見える。
「分かった」
「じゃあ今夜僕が付き添うよ、連絡頂戴」
「……いいの?ミイラ取りがミイラになるかもしれないよ」
「え!?」
にたにたと意地悪そうに笑うなまえ。
「そうならないために私がいるんだけどね」
にたにたをぴたっと消して、コーヒーを煽るように飲み干したなまえは、僕の方をちらっと見て、それから迷子センターを後にした。

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