ゴーストバスター2


ドアを開けば、コーヒーの香りが漂っていた。
「や、やあ」
僕は恋人という設定になっているなまえさんに声をかける。うう、下手だなあ……僕。ぎこちないそれに兄さんが気づいていないか伺う。兄さんはすぐに立ち上がる。
「では、お邪魔をするのもなんですのでわたくしはこれで失礼しますね」
「はい、お話ししてくれてありがとうございました」
「兄さ……」
なんとなく、避けられてるのか、ばたんと閉じられたドアを見て思う。
「さて、クダリさん」
ノボリを見送るために立ち上がっていたなまえさんがどかっとソファに座り直した。足を組んでぼくに喋りかける。さながら舞台上の役者のように芝居掛かった口調で。
「お兄さんと話せたおかげで手間がかなり省けました」
「う、うん」
「まさか1日でわかるとは思いませんでしたけどね」
「え!?もう分かったんですか!?」
驚いた。プロってすごい……。
「大方は。こういうタイプの仕事だと最短記録更新ですよ、本当なら一週間、いえ一ヶ月は掛かったりしますからね」
「へ、へえ」
そ、そんなに掛かるんだ。
「線路沿いに歩きたいんだけど」
「え?」
「お兄さんにバレないように線路を辿らせて欲しいのよ」
「そ、そんなの危ないよ!」
「出来るの、出来ないの、どっち」
「それで、何かわかるんですか。兄さん、は、元に戻るんですか」
「保証は出来ないわ」
「じゃあ、君に頼んだ意味がないじゃないか」
「安心していいわよ、依頼はちゃんとするから」
相反する答えをするなまえさんが真っ直ぐ僕を見てくる。
「……少しなら、大丈夫だけど」
「ええ、多分すぐ終わりますから」
さっそく立ち上がったなまえさんはヒールをならして外にでて行ってしまった。
「待って!危ないから僕もついていくよ」
線路によってはまだ電車は動いているのに!



線路をたどってきたなまえさんは少し汚れたコートを払い、ぼくにノボリを呼んでくるように言った。
「どうされたんですか、なまえさま」
「ノボリさんには最初に謝らなくてはいけません」
「はあ……何をでございますか」
「私はクダリさんと恋人なんかじゃないです。私はクダリさんにお願いされていたんですよ、あなたの様子がおかしいから見てくれって」
「なまえさん!」
「そ、そうだったんですか?」
「まあめんどくさいんで、そこら辺は兄弟で後で解決してくれると助かります」
なんて人だ。僕は驚愕してなまえさんを見る。困惑した表情の兄さんもぼくとなまえさんを交互にみている。
「ヨノワール」
いつのにか大きなポケモンがなまえさんの後ろに立っていた。
ゴーストタイプ特有の不気味さがあるそのポケモン、ヨノワールはなまえさんの声でこちらをぎろっと向いて来た。ぞわぞわとして、身体が固まる。
だんだん近づいてきて、ノボリもなんだか慌てたような表情をしている。
頭もがんがんと痛くなってきて、呼吸が苦しい。
「――」
なまえさんの声を最後に僕は気を失った。

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