私の目のリンゴ(ヤトさま)


6話と8話の間の話。


「なまえさま!なまえさま!」
ノボリさんはいつになくハイテンションで目をキラキラさせている。
「どーしましたー」
「あ、あれは……!あれは」
ノボリさんの視線の先には私のゲーセンの戦利品、ヒトモシのぬいぐるみがいた。
「ブラボー!」
「のののノボリさん!?しーっ!しーっ!」
家族にばれる!
男連れ込むなんて塵一つも考えていない家族に勘違いされると自虐的にノボリさんをなだめる。
「す、すみません」
「いや、大丈夫ですけど……」
「あ、あの、見せていただいても」
「あーはい、ちょっと待っててくださいよーと」
ノボリさんは正座でベッドの上に座っているのだが、今まで見たことないほどに嬉しそうに見える。初めて、ここまでノボリさんの気持ちが分かったかもしれない。
てんこもりになったぬいぐるみからポケモンたちを腕に抱えてベッドへ歩いていく。
どばっと落とせば、ぼとぼととノボリさんの元に落ちていく。
「ブラボー、素晴らしいです」
「シャンデラちゃんもどこかにいるはずなんですけど」
「本当でございますか!」
「本当でございますよー」
私はぬいぐるみを掴んではポケモンのを見つけてノボリさんに投げつける。
「なまえ様!?」
顔面でキャッチしたり掴んだり、ぬいぐるみは無事にベッドの上に転がっていく。
あ、飛び過ぎた。
クマシュンがノボリさんを乗り越えて、ベッドの下に入ってしまった。
ノボリさんはベッドの下を覗き込みながら手を伸ばしている。
「知ってますー?ノボリさん」
「なんですかー」
「その恰好存外かっこ悪くて、私的には超ブラボーってこと」
「そうなんですか?」
むくりとクマシュンの救助に成功したノボリさんは起き上がってこちらを見てくる。
「それはうれしいような、見ないでいただきたいような」
「そうですか、あ、はっけーん」
シャンデラちゃんと、ノボリさんが微妙にかわいい格好を晒してる間に見つけたポケモンを腕に抱えて、ベッドに座る。
「おや、これがシャンデラのぬいぐるみですね!」
「かわいいでしょう」
「ええとても」
ノボリさんは淵に腰掛ける私の背後から覗き込むようにシャンデラちゃんを見てくる。
「触っても?」
首のわきから手が伸びてくるものだから、少々怖い。
恐る恐るという感じにシャンデラちゃんぬいぐるみを撫でるノボリさんの手つきがかわいい。すげえかわいい。
「肌触りもなかなかなんですよね」
「ええとても」
前とおんなじ答えがかえってきた、ノボリさんはシャンデラちゃんに夢中だ!!
しかし私もそんなに余裕ぶったことは言えない。なぜならノボリさんのその適当な返事が耳元で聞こえたからだ。
「……のぼりさーん?」
「ええ」
「聞いてないな」
顔が真横に迫っていた。
ここでノボリさんが私のほっぺにでもキスをしてくれたなら、きっとこれはキュンキュン(笑)のラブストーリーなのだけども。どこかでこんな映画を見た気がする。たしかこの前の金曜ロードショーで。
そんな期待はしないでおこう。
多分きっと、ノボリさんなら自分の体勢に気付いた時に、それはもう申し訳なさそうにそれこそ、今の真剣(にシャンデラちゃんを見るよう)な表情ではなく、動揺しまくりの表情を大いに見せてくれるだろう。
それがいい、それでいいよノボリさんだけどね。
ちょっと寄りすぎ。重いから。私はいつそれを伝えようか悩みながら、シャンデラちゃんたち諸々で楽しんでいるノボリさんを見て、まあいいかと肩を竦めた。

――――――――――

ヤト様、リクエストありがとうございました。
すごく、遅くなってしまい、申し訳ありません。
ずっと前からなんてありがとうございます!

こんなわたしではございますが、精一杯精進していきますのでどうぞこれからもよろしくしてやってください^^


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