04


ノボリさんが来てから1週間。つまりノボリさん時間で3週間。
私の部屋に0時ぐらいになるとよくやってくるノボリさん。
一日来ない日があったが徹夜だったらしく、それにより眠ることでここに来られるらしい。なんとめんどくさい強制送還だ。
毎日来ていたからついに私はベッドで寝られると歓喜していたのにぬか喜びだった。
私の1日がノボリさんの3日というのも分かった。というのが授業中に悩んだ結果である。
というかゲームから計算すれば当たり前といえば当たり前なのだ。私の一か月でノボリさんたちは季節を変える。
ノボリさんは3日の内の1日以外は普通に自分のベッドや仮眠室のベッドで寝られるらしい。
ノボリさんが3週間全く休みがないらしく、今日やっと明日お休みなんですと言われた。うれしそうではない。リングマを目の下に70レベルぐらいに育てておいて、どうしたんだろうか。
「うれしくないんですか」
「いえ久々に寝れますからゆっくり休もうと思ってます」
ゆっくり休もうと思ってる人の顔じゃないと思うけど。
まあ思っても口には出さない。私たちは1週間なぜか出会っただけの人間だ。正直とてもじゃないけど軽口は叩けない。
というかノボリさんの敬語がめんどい。ああ、この敬語がいいのになあ。
「じゃあ、ちょっとだけ外行きますか?」
「え?」
「だってノボリさんあんまり違う世界っての信じてないでしょう?」
町にポケモンがいないのを気づいてくれればわかってもらえるだろうし。あ、目をそらされた。わかりやすいなこの人。マルチ商法とかに弱そうだ。
「いいのですか」
「いいですよお」
間延びした私がノボリさんが来るようになって頻繁に片づけるようになった服のなかから、そこそこのものを引っ張り出す。
反対向いてくださいという前に顔をそむけるノボリさんまじ紳士!
「いいですよー、行きますか」
幸い父も帰っていないし、今の私の家は母はいるが無人に等しいようなものだろう。
鍵もとりあえずかけて、近くの公園まで行ってみる。
「あ、あのここはいつもこんな感じなんですか」
気づいたみたいだ、どう答えればいいのか……。私にはちょっと荷が重いよ。
「こんなんですよ、いっつも」
「ポケモンは、あなたはポケモンを連れていないのもわかりました」
「ノボリさん、あのですね」
「はい、なんでしょうか」
「あのですね、私の世界にポケモンはいないよ」



あの後ノボリさんキャパオーバー再びである。
ノボリさんが全くもって反応しない為、引っ張って帰りベッドに寝かせた。
いくらなんでもこの人頭固い、いや私がおかしいのか。
私はなんにでも手を出して、つまり逆トリにも割と理解というなんというかノボリさんよりは許容できる。
「まあ実感は全くでないな」
恋愛フラグが全く立たないせいだろう、ノボリさんの朴念仁め。
……私の顔のせいかな!!
私はこれ以上考えると(心の)涙が止まらなくなりそうだと、思考をストップさせて眠ることにした。



目が覚めれば何日ぶりかの自室の天井。彼女、なまえさまはいませんでした。
「……夢なのでしょうか」
ポツリと呟いたが、もちろん返事はない。はあ、とため息をつく。3か月間も同じ夢ばかりな訳がない。しかし……。
疲れているのでしょう、ポケモンのいない世界なんて。わたくしは脇の棚に置いた彼ら、モンスターボールを腰につける。
部屋にはわたくし一人。ああ仕事さえしていないわたくしは何になれるのでしょう。
彼らがいない世界など考えられない、彼らがいない世界でわたくしはきっとなににもなれなかっただろう。
そう考えて、情けなさで潰れそうになる。
自室を後にして、洗面台の前に行き鏡を見る。いつもの仏頂面に濃い隈。
顔を洗う。時間の流れの違いというもののせいか、確かに寝た実感はあまりない。変なことを言われてまた疲れたのか。これでは休めていません。
「はあ」
にこりとも笑わない仏頂面がわたくしにため息をつきました。

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