You are my sun(藍歌様)


アニメ設定ですがクラウドさんが出てきます。


「そこの君、なにしてるの」
ぴしゃりと冷たい声が私に言い放たれた。
そこからすぐにその声の持ち主に腕を掴まれ、関係者以外立ち入り禁止のエリアに連れていかれる。
かつかつと見るからに苛立った足音に、責められている気になる。そのまま、多分そう言うお部屋に連れていかれ、座らされる。
「……スリだよね」
相変わらず冷たい声のその鉄道員さんっぽい人は私を同じくらい冷たい目で見てくる。
「……」
私は答える気なんてないから、できる限り黙る。目も見ず、ひたすら怯える真似。ううん、この人怖い。
「なんとか言ったらどうな」
「クダリさん、入りますよー」
あ、
入ってきた人には見覚えがあった。
「なんや、アンタまたなんかしたんかい!」
きっともともとは優しそうな雰囲気もう一人の緑色の服の鉄道員さんは、きっと目尻を上げて眉を潜めてこっちを見る。
「またって?」
白い制服の鉄道員さんは怪訝そうに聞く。あ、やだ、だめ、もう。
「先月、一回スリの現行犯で」
「……二回目ってことか」
「そんときは初犯やったからジュンサーさんは勘弁したったんやけど」
「反省せずにまた」
「そうゆうことになりますね」
……私は俯いてただ聞く。どうせすぐに警察、もういいよね、だって仕方ない。
「はあ」
深いため息の声に、耳が痛い。
がちゃっとまた音がして、誰かが入ってくる。私はそっと上目遣いに、それを伺えば私の前に座る白い制服の鉄道員さんによく似た人。
「クダリ、この書類なのですが……おや、どうかされたのですか」
「スリ、みたい」
「そうなのですか」
入ってきた黒い制服の人と目が合う。
その瞳に吸い込まれそうな気さえしてくる。私は気まずくて目をそらす。
「……まあ、いいじゃあないですか。まだ幼いですし」
「兄さん!?」
「さあ、次はもうないですよ」
いいですね。上から覗き込むような彼の瞳は光が入っていないようで、怖かった。
私の腕を白い人と同じように掴んで、次は外に出た。
「この前も言いましたよね」
「……」
「……」
はあ、とため息を吐かれた。そう私は三回彼らに捕まっている。一回目にコガネ弁の人。二回目がこの人。そして、最後に白い人。この人に見つかったときもじっと目を見られた。こわくて、怖かった。
それからも見つからない様にスリを続けていたけど、それを思い出すたび、やめたくなった。
「なまえさま」
覚えていてくれたらしい。
最初の時に問答したときに聞いていたのを覚えていたらしい。
久々に呼ばれた名前に少しだけ懐かしさと違和感を感じる。
「……はい」
ギアステーションの入り口まで案内された。真っ暗だ、もう夜になってしまっているらしい。月は隠れてしまって、街灯の光がぽつりぽつりとともっている。時折見える、うるさいくらいのイルミネーションも見える。
「……だめですよ、もうしては、いけません」
「……」
返事が出来ないまま私はそこを後にした。


酔いつぶれたおじさんの財布まであと数cmのところで腕を掴まれた。
「いい加減になさいまし」
ぎゅっと握られた腕が痛くて、掴んだ腕をたどって顔を見れば、そう、ポスターに書いてあったけどノボリさんっていうらしい、黒い人がまた立っていた。
ぴしゃりと、冷たい水を掛けられたような気分になって、心臓がバクバクと音を立てる。もうだめだ、もう終わりだ。
私の心臓の音はおっきくなって、変な汗も出てきて、すごくこわい。あの人の目をまた見れずに俯く。また、あの目なのかな。
「……お家は、ないんでしたよね」
「……ご両親は」
「いません」
この世界は小卒大人法というものがある。両親がいたとして10歳を超えた私には関係はないのだけど。
「……」
私の座っていた椅子の隣にノボリさんが座る。
「……」
「……なまえさま」
「……はい」
私の方に向き直ったノボリさんはにっこりと、ポスターの笑顔と一緒の笑顔を私に見せた。
「もし、もしよろしければ、わたくしのところに来てはいただけませんか?」


あの時の私は、彼のことをバカだと、思った。
引き取られてすぐはそうやって罵ったこともあった。
こんな小娘を引き取って、なんになるのだ。悲しくて、つらくて、受け止めてくれる彼が妬ましくて。
「……なまえ」
ノボリさんに同じように、手を引かれて、ギアステーションの廊下を歩く。いまは、ちゃんと手を繋いで。
「なんですか」
「ちょうど、この時期でしたね。あなたと出会ったのも」
「そうでしたっけ?」
「そうでしたよ」
覚えているのを誤魔化すように笑えば、ノボリさんもくすりっと笑ってくれた。
忘れるはずなんてない。あの言葉に心底救われ、心底感謝した。
優しさに触れられたそんな気がした。
ギアステーションの外に出れば、あの日、一人でこんなふうに送り出された日とは違って、月が明るく道を照らしていた。それこそうるさいイルミネーションなんて気にならないくらい。
振り向けば、あなたがいた。
それだけできっと、これが幸せだ。

―――――――――

藍歌さま、リクエストありがとうございました。
私は嫌われ系を長編以外で読んだことがなかったのでご想像と違うものになってしまったかもしれません。すみません。クーリングオフは可能です。

また、小説版の設定である小卒大人法を話上使わせていただきました。
分からない場合はお手数ですが、みなさん検索お願いいたします。

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