こうかはばつぐんだ(咲良さま)


「いけませんなまえさま!」
「なんでいけないですか!!」
ギアステーションのど真ん中、痴話喧嘩みたいなものを繰り広げているのが、自分の兄と兄嫁になるだろうその恋人だというからため息が零れそう。
「ですから、もう夜遅いので送りますと言っているんです!」
「別に平気ですって言ってるじゃないですか!」
ラッシュが過ぎた夜のギアステーションとはいえ往来の真ん中でそんな喧嘩をされても困るんだけどなあ。
なまえの言うことはもっともで、なまえとノボリの同棲している家は普通にここから近い。
一回仲裁入ったけど無駄だったのは覚えてるから、事の成り行きを眺めることにしよっと。
「しかしなまえさまはこの前もその前も男性に絡まれてたじゃないですか!」
「だって仕方ないじゃないですか!」
「なにが仕方ないものですか!!わたくしがどれだけ心配したと思うんですか!」
そうだね、僕と一緒に書類仕上げながら「ああ、なまえさま!」「大丈夫でしょうか」「悪漢に襲われていたりしないでしょうか」「なまえさまなまえさまなまえさまなまえさま」なんてずっとずっとずっと頭が壊れちゃいそうなくらい聞かされたもん。
「確かにこの前は探し物してた男性と一緒に探し物探しましたけどすぐ帰ったじゃないですか!」
「それが心配なんじゃないですか!!」
「それにその前ってどういう」
「ヨーテリーやチョロネコやその他有象無象に絡まれてたでしょう」
有象無象って。
……自分の兄ながらすごいこと……。オスの、と付け足された言葉にため息が出る。
なまえも同じことを思ったのか、ぽかんと固まっている。まさかポケモンもカウントに入るなんて、僕でも思わないしね。予想はできてたけど。
「それになまえさまは少し注意力が散漫です」
「どういう意味ですか」
むっとしたなまえがノボリを睨みつけている。どうみてもヨーテリーのにらみつけるくらい可愛い。ノボリは顔を少し赤くして怯む。怯むというか確実に照れてるだけ。どうせなまえさま可愛らしい!なんて思ってるんだろうなあ。
「ですから、夜も遅いのに何故ポケモンがいたら立ち止まったりするんですか」
まあ、ぼくも正直一人で帰られるとその後のノボリがめんどくさいからなあ。
きゃんきゃん吠えるなまえに聞く耳持たないノボリ。
なんだろうこの、勝負になってない感じ。
生まれたばかりのヨーテリーがハーデリアにでも吠えてるみたいな。
適当に口論を遠目から聞き流していると、ノボリのおっきな声が聞こえた。
「仕方ないじゃないですか、可愛いんですもん」
「なまえさまの方が可愛らしいです!」


しーん。
まあ、なるよねー。
なまえもノボリの言葉に戸惑ってしまってるのか、攻撃できない。
怯み?麻痺?
「なまえさまはご自分のことをわかってません!こんなに可愛らしいのに、夜になんて出歩いて襲われたらどうするんですか!」
ノボリの猛攻になまえはもう瀕死寸前。顔を真っ赤にして、うつむいている。やけどかもしれない。
「……こんなとこでそんな恥ずかしいこと言わないでください」
ノボリのことを掴んだなまえはいつも通りノボリに捕まえられて、関係者以外立ち入り禁止のエリアへと連れられて行った。
僕はノボリとなまえの後を追う。どうせ、執務室に連行されてイチャイチャしてると思うし、邪魔してあげなきゃね。
今日は仕事早く終わりそう。やった!

――――――――

咲良さま、リクエストありがとうございます。二度もお手間をかけさせてしまいすみません。
ファンだなんて、ありがとうございます///
小動物系ヒロインじゃない、ような気もしますすみません。
みちづれは特に更新も遅いのに、ご感想頂けてとても嬉しいです。
これからも朝食をよろしくお願いします。

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