five


「ねえノボリくん」
「はい、なんですか」
「なんで、隣なの」
某ファーストフード店にて、テーブル席に座った私を壁とはさむように隣に座ったノボリくんの不思議極まりない行動について聞く。
「御嫌ですか?」
「いや、嫌じゃないけどいろいろめんどうじゃないかな」
「いいじゃないですか、あーん」
ポテトを私のほうに持ってきてそういうから、口を開ける。
出された課題を黙々とノボリくんとやっつけていたところ全くもって進まなくて困ってしまう。
「……そういえばなまえは卒業したらどうするつもりなのでしょうか」
「あーそっかもうそんな時期だよねえ」
「ええ、今日もお話がありましたし」
緊張感のない私のような生徒たちにありがたいお言葉を言い放つ先生たちの声を右から左へ聞き流していたのを思い出す。
「ノボリくんは?」
「わたくしはこのまま専門学校に進むつもりなのです」
「へえ、何か目指してるの?」
「わたくし鉄道員になるのが夢なのです」
私はじっとノボリくんを見た。少し恥ずかしそうに目をそらすノボリくんに頬が緩む。めったに表情を変えないノボリくんにしてはすごく珍しい。
「そうなんだ。いいなあ、私なりたいものなんて考えたことなかったから」
「ではわたくしのお嫁さんになってくださいまし」
……。
……。
…………。
「な、なに言って」
椅子と一緒にが微かに後ろに下がってしまう。
「なりたいものがないならば、わたくしのお嫁さんになってくださいまし」
ノボリくんは何を言っているんだろう、何を言っているか分かってるんだろうか。
「というより、あったとして最後はわたくしのところにきてくださるなら何の問題があるでしょうか」
ファーストフード店なんかでなんつー会話を。重いよ!
「ぶっとんでるなあ、プロポーズみたい」
フウロちゃんみたいだなあ。そういえばフウロちゃんはパイロットだったか。
「嫌ですか」
「うーん、どうだろ」
ちゅう、と溶けかけてきたチョコシェイクを吸う。
甘い。前で同じようにバニラシェイクを吸うノボリくんと目が合って、ついそらしてしまった。
そういえばこれの原材料すごいカロリーだった気が……。
「なまえ、大好きです」
「うん、どうしたの」
「なまえは、わたくしのこと好きですか」
「タブンネ」
気恥ずかしくて茶化した私を見るノボリくんの顔が思いのほか怖い。ノボリくんは私のことを抱きしめた。
H25.07.26

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