three


女の子の情報網とはすごいものだなあ、と感心してしまう。
「なんで、あんたなんかが」
キッと綺麗な目を鋭くさせた女の子Aがこっちを睨んできているなか私は内心溜息を吐いた。
原因はノボリくん。
十中八九ノボリくんだ。
これ確実にノボリくんだろう。
そこそこ気恥ずかしいし、ノボリくん人気のため隠しておくに越したことはないと思ってる私と違って、ノボリくんは意外にもオープンだ。
私の反応が微妙だから適度に気を利かせてくれているものの、火のあるとこには煙はやっぱり立つものらしく、噂程度ではあるものの私達が付き合っているという事実が色々まわっているらしい。
私がしつこくしたとか。いろいろ。
悪意のある噂ではあるものの、まあそれこそ事実かどうか定かでないから陰口程度で済んでいるみたいだった。
「あんたが、ノボリくんと釣り合うわけないじゃない、手なんか握って」
顔を真っ赤にさせたその子、友達の友達みたいな子はわなわなと拳を握って、相変わらずこっちを睨みつけている。
さっきノボリくんと別れたところ見られたのかなあ。いつも家まで送ってくれるノボリくんが今日は家に弟しかいないからと途中で別れたのだ。
ああでも、こんな風に怒れるってことはすごいことではあるのかなあ。ノボリくん愛されてるなあ。
「ええーっと」
「なによ!」
どん、と押されて尻餅を付く。うん、痛い。というか私重いなあ、やだなあ。鈍い音がした気がしてダイエットしようか、なんて考えが出てくる。
手をついたせいで手にも擦り傷がちょっと。
ぱんぱんと叩いて立ち上がれば、後ろから声を掛けられた。
「なまえ?」
「わあ!」
後ろをばっと向けば、怪訝そうな表情のノボリくん。後ろから足音が遠ざかるのを感じる。逃げたか。まあ、いいけど。
「どうしたの、ノボリくん」
「ノボリ」
「うん。どうしたの?」
「いえ、やはり家まで送ろうと思いまして引き返してきたのですが。それよりなまえこそどうしたのですか?」
「あー、ぶつかっちゃって」
「そうでしたか」
信じてなさそうなノボリくんの表情に誤魔化すように笑えば、ノボリくんは少し表情を緩ませる。
「やはり、家まで送らなければ駄目ですね」
「え」
「さあ、行きましょう」
「いや、いっつも言ってるけど悪いって」
「また、尻餅つくと大変でしょう?」
ね?なんて言われて嘘吐いたのを後悔した。



移動教室中。いつもはノボリくんが隣にいるというのに、姿が見えず、キョロキョロしていると、階段の踊り場に例の彼女を見つけた。
「あ」という階下の私の声にこっちを見た女の子はキッと睨んできた。そして機嫌悪そうに踵を返そうとした瞬間、彼女がぐらりとバランスを崩して階段から転落した。怪談のところに一瞬だけ人影が見えたような気がした。
私はその子に駆け寄ったが、私と気づいたらしく伸ばした手は叩かれた。彼女は立ち上がって恐らく教室に帰っていた。彼女が落ちてきた上を見上げれば、そこからノボリくんが降りてきた、え?
「ああ、なまえ」
「ノボリくん?」
「ノボリですよ、」
「あ、うん、ノボリ。そっちに人行かなかった?」
「いいえ、それよりもうすぐ授業始まりますよ」
私の手をさりげなく掴んだノボリくんが教室に向かって行く。
隣から見たノボリくんの横顔は何を考えているのかやっぱりわからなかった。
H25.07.22

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