目蕩む


布団をかぶって微睡む。
隣にはクダリがいた。すーすーと寝息を立てている辺りを見れば久しぶりの休みだからか疲れていたのかななんて思う。
そっと顔を近づけて、ちゅっとほっぺにキスをする。
すべすべしてて何度も唇を押し付けるようにちゅっちゅっと馬鹿みたいにキスをする。起きてるときにできるほど私は麻痺してない。
起きてないことを確認して、クダリの体の下に腕を差し込んでもう一度心地いい暖かさに身を委ねる。
ごそごそと胸のあたりに頭を押し付け、すうっと空気を吸えばクダリのにおいがした。
胸に顔を埋めて「おやすみなさい」って言う。
ふう、とため息を吐いて私はそのまま目を閉じ……目の前にはにやにやしながらこっちを見るクダリがいた。
「お、は、よ」
語尾にハートが付きそうなぐらいご機嫌な声で私に囁いたクダリ。ぞくっときて、背筋が伸びる。
「くだっ……起きてたの?」
「うん」
にこっとそれはもう嬉しそうなクダリが私の脇に手を滑り込ませる。
「具体的にはなまえがぼくにキスいっぱいして、頭を押し付けて匂いかいでた辺りからなんだけど」
「最初っからじゃねーか」
「えへ、ぼくって愛されてるよね」
文句を言おうとするが、その前にぎゅっと抱き寄せられ言葉が詰まる。
「今日すっごい素直、どうしたの」
「べつに」
「そ?じゃあいいけどね」
ちゅっと額にキスをしてきたクダリ。私はそれも気にせず、枕とクダリに頭を押しつける。クダリに頭突きしてしまったみたいだ。
「いたい」
「ぼくの方が痛いよぉ」
クダリがもぞもぞと動くから、私が布団からはみ出てしまう。少しだけ冷たい空気にぽかんとしてた意識を引き戻される。
「くだりぃ」
冷たい空気から逃げるようにクダリに手を伸ばして暖かい布団を追いかける。
「今日は本当に甘えんぼさんだね」
嬉しそうな声のクダリが私をぎゅっと抱き寄せる。クダリもあったかい。でもちょっと抱き寄せられて息苦しい。でもその息苦しさも丁度いいから私の意識はまた何処かにいってしまいそうになる。
「なまえ」
呼ばれて薄目でクダリを見ようと顔をあげれば、目の前いっぱいにクダリの顔が広がっていて、身体が仰け反る。それを追いかけるように顔が近づいて私の口に唇を引っ付けてきた。触れるだけのそれが心地よくてつい目がとろん、としてしまう。
「ん……」
零れた声を合図に仰け反った私を反対に折ってしまうくらいの勢いで激しいキスに変わる。
「ふ、は……」
「……なまえ」
せっかくの気持ちいいそれも全部吹き飛ばされてしまう。
舌も入ってきて逃げることもできない。
息絶え絶えな私の上に跨るようなクダリが満足そうに見下ろしてくる。
「すごかった」
「はあ?」
「もっとしよ」
「あのねえ、私寝たい」
「だめ、ぼく今日すっごくいちゃいちゃしたい気分」
「んなもん知るか」
「なまえはぼくといちゃいちゃしたくないわけ?」
頬を膨らませてお歳に不相応な表情をしているくせに似合うクダリが「ねえ、ねえねえ」って甘えるというかしつこく、ヨーテリーみたいに首のあたりにぐりぐりと頭を押し付けてくるものだから、あったかくてさっきの心地いい微睡が戻ってくる。
私はつい無意識にクダリの頭を抱きしめる。髪、くしゃくしゃ、あ、寝癖。
ちゅうっと額にクダリみたいにキスをすれば、少しうれしそうな声を漏らすからその声をもっと聴きたくなる。
「クダリ、クダリー」
「なにー?」
「クダリー」
「なまえー」
もぞもぞと私の背中に手を回してきたクダリ。
「クダリー」
「ふふ、なまえー」
別に意味もなくクダリを呼びながらしがみつくみたいに抱き着く。きゅーって胸を少し潰すくらいにべったりと引っ付く。
「あついね」
「かもねー」
熱くて、あったかくて目蓋が重く感じてしまう。
「クダリ」
「ごめんね」
「なにがぁ」
もう既に半分ほど意識が飛んで行ってしまっている私は脊髄かどこかで反射的に答える。
「いっつもこんなふうにしてたいのに、一緒にいてあげられなくてごめんね」

「許したげる」
そんなこと、知ってたし。
ぎゅうってクダリを抱きしめて、もっかいふかふかベッドとクダリに沈むことにした。
H25.06.05

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