欲望果てなく


メタ。




「ぼく、クダリ!」
ぼくらの前に初めて現れたなまえ。
なまえをずっとずっと待ってた。
嬉しい、なまえと初めて会った時はギアステーションの前で男の子とのタッグバトルだった。負けちゃったけど、次なまえがダブルに乗ってくれた時はぼくが勝った。
なまえは毎日毎日ぼくらに会いにきてくれた。なまえはうんと強くなってぼくやノボリと戦ってくれた。
すごく幸せだった、なまえに会うためだけに生まれたんだよ?なまえ。なまえ、なまえ大好き。
なまえがこないとこのギアステーションは真っ暗で寂しいから。また来てね!そう言ってぼくは手を振ってなまえを見送った。
電車の中が暗くなる。窓の外にはなまえにバトルポイントについて話す名無しの鉄道員が見えた。
あ、今日はもうレポートしてる。世界の消灯の時間だ。
0と1の世界が真っ暗になった。


最近ね、なまえこないね。
「前もそうだったでしょう。テストがあるとかではないのですか」
「違うよ」
このまえ、テストあったばかりだもん。
「……考え過ぎです」
ノボリはそう言ったけど、ぼくは知ってる。なまえはぼくらに会いに来てくれなくなってきた。
前の彼らのときと同じように。きっと会いにきてくれなくなっちゃう。
ぼくはギアステーションから出られないんだよ。この世界から出られないんだよ。
「なまえ」
「はい!」
「久しぶり!」
なまえ、なまえのばか。
飽きちゃだめ、飽きさせたりなんてしないよ。なまえがこっちに来てくれたらいいのに。ぼくが大切に大切に抱きしめて、大事にしてあげるから。
なまえ。
今のうちに、君がぼくらに夢中のうちに。


ある日、全世界が明るくなった。おかしいことに気づいたぼくがホームにでた。初めて出られた。
目をぱちくりと瞬かせて、キョロキョロとホームを見回すなまえがいた。
ぼくの願いが叶った!すごい、すごい!!ずっとお願いしてたおかげかな!
「なまえ!」
ぎゅっとぎゅうっとなまえを抱きしめる。どこにもいかないように。ぎゅーって抱きしめた。
「ク、ダリさん?」
そう、そうだよ!
「うそ!だって……」
なまえが大好きっていっつも言ってるぼくだよ?言ってくれてたでしょ?DSの前でいっつも。
ぼくのこともノボリのことも大好きな悪い子のなまえ。大丈夫、ぼくら仲良いから、そんななまえのこと怒ったりしない。
ぼくらのことが大好きで仕方ないんでしょ?知ってるよ。大好き。
「ノボリー!!!」
なまえを引っ張って、ノボリのとこまで連れて行く。
「見て見て!なまえが来てくれたの!なまえ!!」
なまえを見せればノボリはいつもの無表情を緩ませて、なまえさまって呟いた。
ノボリもぼくと同じようにぎゅーっとなまえを抱きしめる。
もうレポートなんてしなくていいからね。


「なまえー!」
ギアステーションにやってきたなまえに飛びつく。なまえもこの世界に慣れてきたみたい。最初はぼくらに引っ付いてとっても不安そうだったから、良かった。ちょっぴり残念だけど。
「あ、クダリさん!」
「今日もダブル乗ってくれる?」
なまえにそう聞いたらなまえは少し申し訳なさそうに、「今日はカミツレさんと買い物行くんです」って言うから。
……。
なまえはモテモテ。
みーんななまえが好き。この世界の神様みたいに、みんなに好かれてるなまえ。
トウヤもトウコも、カミツレちゃんも博士も、クラウドもキャメロンも、ぼくの手持ちも、どんなポケモンもジャッキーもヒロカズもチャンピオンも四天王もジムリーダーも他の地方のトレーナーも、OLもサラリーマンも園児も保育士も、ミニスカートもおぼっちゃまも山男もエリートトレーナーもみんな、みーんななまえが好き。
「そっか、なまえ」
「ごめんなさい、明日は」
「ううん、違うの。あのね、」


「なまえさまは帰ってしまったのでしょうか」
寂しいそうに、前みたいに目を伏せたノボリ。あの日からいなくなったなまえにみんな悲しんでる。
「長い夢だったのかな」
「そうだったのかもしれませんね」
ノボリには教えてもいいかなって思ったけど、やっぱり秘密。
うそだよ。
あのね、なまえはちゃーんと、ぼくの車両にいるから。
ノボリも、誰もこないダブルトレインにね。
ぼく、すっごい幸せ。
H25.05.22

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