シガレットケース


如何わしくないつもりですが、サブマスが喘ぎます。




「なまえ、帰ったらコーヒーお願い!」
「わたくしの分もよろしくおねがい致します」
「ノボリのコーヒーとかもうコーヒーじゃないよー砂糖でしょ」
「クダリこそよくあんな泥水のようなものが飲めますね」

そう言い合いながらマルチへ向かうボス達。
その後ろ姿を見ていた私は尊敬するお二人のためにコーヒーを淹れる準備をしようと踵を返した。





ぷはー、胸を大きく上下させて白い煙を吐き出したクダリさん。隣で遅れて白い煙が上がる。ノボリさんも吸うのか。二人の火を点ける動作に見惚れていた私は急いで換気扇を回す。
私自身は吸わないし、休憩室は吸わないどころか嫌いな人も利用するから吸わない決まりなんだけどなあ。

「ここ喫煙は禁止ですよー」
「あ、ごめんね。我慢出来なくて」
「これ一本にしますので」

タバコを吸って幸せそうに笑うお二人にこの人達も人の子だなあと思いながら、なんとなく理想の上司像がピシピシとひびがはいった気がした。

「お二人もタバコとか吸うんですね」
「うん」
「なまえさまは吸わないのですね」
「そうですね、あコーヒーどうぞ」

お二人の前にカップ(真っ黒な方をクダリさん、ほぼ白なほうをノボリさんに)を置いて、隣のソファーに座る。

「お二人は禁煙しないんですか?あ、ほらクラウドさんもするって言ってたじゃないですか」
「そうですね、確かにそうした方がいいのでしょうけど」
「んー、なまえが言うならやってみようかな」

別にしろとは言ってないんですけどね。

「じゃあさーなまえ管理してよ、ね?」
「あぁ、確かに自分で管理するより確実かもしれませんね」

お二人はそんな風に笑いながら、結構まだ残っているタバコを渡してきた。

「え?」
「では、よろしくお願いしますね」
「ぼく頑張るね!」

まあ、お二人がやる気なら付き合いますけど。







そんなことがあって一週間。

「ぁ、なまえ……おねが、お願い…」
「なまえ、ぁ……後生でございますぅ」

足にすがりついたクダリさんとノボリさん。

「ね、ねえ、おねがい……ぼく、も、だめえ」
「おね、がいしますぅ、なまえさま……」
「……禁煙するって言ったのはお二人ですよ」
「う、うん、わか、わかってるからぁ」
「なまえ、もぉ、限界でございます……ぁ」
「ちょっ、クダリさんやめ」

ぎゅっと私の太ももの方に手を伸ばしているクダリさんに鳥肌が立つ。

「なんでもするからぁ、許してぇ」
「ァなまえなまえ」

離してくださいいいい!と二人から逃げようとした私がバランスを崩してソファーに座るように倒れる。涙でぬれているクダリさんの目が私の目とばっちり合う。ノボリさんは上目使いで悲劇のヒロインポーズで私の方に手を伸ばしている。
なんで、こんなことに!

「ねえ、いいでしょ……」
「……っあ、なまえ、助け、てくださいましぃ」

まさか私の尊敬していた二人がニコチンによってこんなふうになるなんて!!
というか色気半端ないなおい!

「ボス、書類持ッテキ……なまえナニヤッテンノ?」
「ちが、これは……!」
「なまえ……ねえはやくぅ」
「ボス黙って!!」

入ってきたキャメロンは私が二人から逃げようともがいていたところをSMプレイかなにかとでも思ったのか、ドン引きした目でこっちを見てくる。足で頭を離そうと蹴っているような体勢なのも多分原因。クダリさんは勘違いを助長させかねないような発言をするし。

「……ボス、マルチ待機シトケッテ言ッテタヨ。ジャ、オレ仕事アルカラ」
「待って、ほんと待って誤解!!」
「なまえ、行かないでくださいましぃ!」

そそくさと出ていくキャメロンを引き留めようとするけどノボリさんがすごい邪魔だ。うああああどうしよう明日から仕事どうしよう!しかもキャメロンとマルチだし!!

「このままではマルチに行けもしません」
「なに言ってるんですか、行かないなんて駄目ですよ!」
「じゃ、あはっ、一本だけ」
「いいでしょう、一本だけ」

自棄になって、ね?と首を傾げたクダリさんとノボリさんに預かっていたタバコを握ってしまう。ぐしゃと音が聞こえた。

「帰ってきたら、です」
「やった!なまえ大好き!」

ちゅっとほっぺにキスをされる。クダリさんは本当に嬉しそうにスキップをしながら出て行く。

「さすがなまえですね、ありがとうございます」

反対側にキスをしたノボリさんもクダリさんを追うように出て行った。

「ニコチン怖い」

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お二人は耐え性なし。別に喫煙してる人がこんな感じじゃないです。中毒系がいいなって思って薬中よりはいいかなって。
すみませんでした。
H25.05.02

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